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座談会

2018年10月30日

東南アジア5ヵ国の人材事情

AsiaX:シンガポールではEPの厳格化が言われていますが、各国の就労ビザの現状はいかがですか。

 

戸矢崎:インドネシアでの日本人の就労枠は、ローカル3人に対して1人です。ただ、潜在的な日本人の需要はありますが、工業団地で働く場合にはインドネシア語が必要になりますし、現状はキャリアアップに繋がる職種が非常に限られていると言えます。
 就労ビザ取得の要件としては、就労経験5年、大学卒業証明書、年齢が重視されています。中でも、最近は就労経験が特に重要になってきていて、新卒者が働くのはさらに難しくなってきています。

 

古谷:ベトナムでは、外国人の採用に関して産業や職種によるルールの違いはなく、外国人とローカルの比率などは規定が一切ありません。ただ、残念なことにベトナムは人気がなく、ここで働きたいという日本人は少ないです。これだけ経済成長が著しく、ビジネスが伸びてきている中で、仕事をするのは面白いはずですが、その魅力がうまく発信できていないと思います。
 ビザに関しては、日本人のWP(ワークパーミット)は最長2年です。ただ、大学を卒業していることと、ベトナムで就く仕事の経験が3年以上なければなりません。ですから、基本的には新卒者がベトナムで働くことはできません。

 

渡名喜:マレーシアでは、大卒プラス3年、高卒プラス5年の就業経験でビザがおりているという実績があります。海外に飛び出したい若い日本人にとって、ハードルはそれほど高くはありません。ローカルとの比率の規制もないですね。ただ、最近では見直しが入り始めている気はしています。

 

鉤:タイでは、新卒でもビザが取得できる場合があるので、採用枠があれば申請自体はスムースです。採用枠は、現地法人ではローカルと外国人の比率が4:1、駐在員事務所は1:1です。ビザの期間は通常1年で、毎年更新します。
 今、注目されているのは、BOIという制度です。マレーシアのMSCに似ていますが、資金、新技術を持つ海外企業向けの特別なライセンスで、取得すれば、採用枠の上限はなくなります。例えば、ASEANの地域統括拠点をタイに置くと、このライセンスが取得できます。政府としては、情報やノウハウをタイに集めるのが狙いですね。

 

AsiaX:ASEANの地域統括機能をどこに置くのかというテーマがクローズアップされるようになってきています。企業の動向について各国の実感を聞かせてほしい。

 

古谷:ベトナムには来ていませんね。タイ、マレーシアと比較しても経済格差がありますし、外資に対する規制緩和は進んでいるとはいえ社会主義国であり、大企業が管理部門をベトナムに持ってくるというのは現実的ではありません。
 一方、シンガポールまたはタイからベトナム国内を見ているケースは多いですが、販売部門に関してはタイの方が増えてきています。ベトナムに拠点を作らずに、タイ法人にベトナムから営業スタッフを派遣する形にして、彼らがベトナムで販売活動をしています。

 

戸矢崎:インドネシアにも来てないですね。金融系が、タイではなくシンガポールから見る流れが顕著になりましたが、インドネシアの立ち位置は変わっていません。

 

渡名喜:マレーシアには移ってきています。シンガポールでなければできない仕事かという点が大事ですが、企業はコストの面から基本的には移管したいと考えています。クアラルンプールは周辺国へのアクセスも良いですし、アシスタント業務などは移管しても、英語、中国語スピーカーはいますので、大きく困ることはないようです。企業が移ってきていることに関しては、マレーシアはシンガポールの政策の恩恵を受けていますね。

 

森村:コールセンターやBPOセンターのバックオフィス系は、シンガポールからマレーシアやタイに流れていますね。シンガポールでも、マレーシアの人選をしてほしいという依頼が来ています。
 一方で、シンガポールにマーケティング戦略機能やリスクマネジメント・コンプライアンス機能を置いて、アセアン地域のガバナンス強化をしていく傾向も、この1、2年で出てきています。何をシンガポールに置くべきか、常に議題に上っている状況ですね。

 

渡名喜:情報は間違いなくシンガポールに集まるので、シンガポールに拠点を置かないということはあり得ない。機能をどう切り分けるのかだと思います。

 

鉤:BOIの効果もあって、大手企業がシンガポールからバンコクに地域統括拠点をつくる流れはあります。税制の優遇措置などのほか、カンボジア、ミャンマー、ベトナムなどメコン地域まで見るには非常に立地が良いということもあると思います。

 

森村:人材面ではどうですか。リージョナルマーケットを見られるローカル人材はいますか。

 

鉤:いません。基本的に日本人ですね。

 

森村:シンガポールでは、地域統括拠点にローカルのHRダイレクターやリージョナルマネージャーを置いている企業が多く、リージョナルマーケットを見られるローカル人材も他のアセアン国に比べるといると思います。

 

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