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法律相談

2023年12月1日

Q.シンガポールにおけるエンプロイメントパス(EP)取得要件の変更について

Q. エンプロイメントパス(EP)の取得要件の厳格化が行われたと聞きました。変更点を教えてください。

 A. エンプロイメントパス(EP)は、主にマネジメントレベルや専門性の高いポジションに就く職種向けの就労ビザになります。従来から、EPを取得するためには、以下の条件を満たすことが求められていました。
 
 ①管理職、専門職、経営層人材、高等技術者等に該当する。
 ②相当の資格を有する:例えば卒業機関がトップレベル、専門性のある資格、高度な技術を有する。
 ③固定月給がS$4,500以上(以下、「最低適格給与」)である。
 
 2023年9月1日より、上記最低適格給与額がS$5,000へ引き上げられました(45歳程度以上の人材についてはS$10,500)。
 
 更に、相補的な評価を行う枠組み(Complementarity Assessment Framework; COMPASS)が導入されることが発表されました。
 

Q. 相補的な評価を行う枠組み(COMPASS)について詳細を教えてください。

 A. 相補的な評価を行う枠組み(COMPASS)は、以下の4項目の基準をポイント制にして評価する枠組みとなります。それぞれの項目の達成度に応じて、ポイントが付与され、EPを申請するには、計40ポイント以上を取得する必要があります。
  
 ①給与
 ②スキル
 ③企業内の国籍多様性
 ④ローカル雇用の促進
 
 ただし、以下のいずれかに該当する場合は、例外として扱われCOMPASSの適用が免除されます。
 
 ①固定月給がS$22,500以上の場合
 ②世界貿易機関(WTO)の「サービスの貿易に関する一般協定(General Agreement on Trade in Services)」又はシンガポールが加盟している自由貿易協定(Free Trade Agreement)に基づく企業内転勤(intra-corporate transferee)を利用した異動の場合
 ③例えば1ヵ月未満の短期雇用の場合
 

Q. EP申請から取得までの手続きについて教えてください。

 A. EP申請は、①申請、②IPAレター取得、③写真・指紋の登録、④EPカードの発行、という流れでEPを取得することになります。

①申請

 雇用主はまず、申請者本人から書面による同意を得なければなりません。その後、雇用主は、申請者が記入した申請書を手数料とともに提出します。申請状況は、申請日から10営業日以降、オンライン上で確認することができます。ただし、追加で書類の提出が必要な場合には、10営業日以上要する場合があります。
 
 シンガポールで登記されていない事業者の場合、EP申請は現地の事業者又はスポンサー企業がCorppass経由で行う必要があります。この場合、申請の結果は、8週間以降にオンライン上で確認することができます。ただし、追加で情報や説明が必要な場合には、8週間以上要する場合があります。書面による同意、手数料の支払いは同様に必要となります。
なお、EP申請に際し、新型コロナウイルス感染症に関するワクチン接種の要件は撤廃されました。

②IPAレター取得

 EPの申請が受理されると、MOMは IPAレター(in-principle approval letter)を発行します。申請者は、雇用主から送付されたIPAレターをもって、シンガポールに入国することができます。つまり、IPAレターはシングルエントリービザの役割を果たし、6ヵ月間有効となります。必要な場合には、シンガポール到着後に健康診断を受けることになります。
 
 雇用主は、シンガポールへの渡航も含め、申請者がEPを無事に取得するまで随時状況を確認する必要があります。申請者がシンガポールに到着後、雇用主はIPAレターの有効期間内に必要な情報及び書類を提出しなければなりません。また、雇用主はEP発行の際にS$225の支払いが必要になります。

③写真・指紋の登録

 EPが許可されると、MOMは雇用主及び申請者の両方に通知を送付します。当該通知は1ヵ月間有効であり、申請者はその間における就労の開始、シンガポールへの出入国が可能になります。また、申請者の写真及び指紋の登録が必要な場合には、当該通知の記載に従い、2週間以内にEPサービスセンターで登録を完了しなければなりません。

④EPカードの発行

 上記の写真及び指紋の登録が不要の場合、MOMはEPの許可後5営業日以内にEPカードを発送します。写真及び指紋の登録が必要な場合には、EPサービスセンターで登録が完了後5営業日以内にEPカードを発送します。EPカード受領後、カードに記載のQRコードをスキャンすると、EPのステータスや有効期限、各種情報を確認することができます。
 

日本法弁理士・シンガポール外国法弁理士 田嶋麻美

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