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法律相談

2023年10月3日

Q.シンガポールにおける清算手続きについて②

Q. シンガポールにおける清算手続きについて、前回教えて頂いた登記抹消とは別の任意清算手続きについて教えてください。

 A. 清算開始後12ヵ月以内に債務を全額返済できると取締役会が宣言した場合、株主による任意清算の手続が開始します。会社は、その負債のために事業を継続できないと取締役会が判断した場合(すなわち、会社は清算の開始後12ヵ月以内に破産)、債権者による任意清算を選択することができます。いずれの清算手続においても、会社は清算人又は仮清算人を任命し、会社の業務を清算、資産の分配、会社法及び/又は破産法、再建法、解散法に基づく通知をする必要があります。清算人が任命されると、清算人又は清算人の同意を得た総会によって承認されない限り、取締役会すべての権限は無効になります。清算手続が開始されると、企業の資産は凍結され、不当な支払いを回避するために会社が無担保債権者に支払うことはできなくなります。
 

Q. 任意清算の手続きの流れを具体的に教えてください。また、手続きにどれくらいの期間を要しますか。

 A. 任意清算に関する手続きは少し煩雑ですが、ほとんどの手続きは会社の清算人により行われます。
 
 ・取締役会により、支払能力宣誓書を作成する。
 ・清算人を任命し、清算人の報酬を決定するための特別決議を可決する。
 ・シンガポール会計企業規制庁(以下、「ACRA」)へ特別決議の通知を行う。
 ・特別決議をシンガポール国内の新聞にて告知する。
 ・清算人をACRAに登記する。
 ・清算人による会社財産の換価処分及び清算人により最終清算配当を確定する。
 ・清算人の銀行口座の名義を管理人へ変更する。
 ・清算手続き完了後、シンガポール国内の新聞にて告知する。
 ・清算手続完了後、最終株主総会の招集通知をシンガポール国内の新聞にて告知する。
 ・最終株主総会を開催する。
 ・ACRA、管理人との最終協議を行い、3ヵ月経過後登記が抹消される。
 
 ただし、会社の資産や負債内容により手続きが変わることがあり、シンガポール内国歳入庁との手続きに時間を要することもあります。清算手続きを開始する前の会社の財務状況により、任意清算が完了するのに7ヵ月~2年以上かかる場合があります。
 

Q. 債務返済能力があるので、任意清算の手続きで進めようと決めましたが、もし清算人が債務返済能力はないと判断した場合、どうなるのでしょうか。

 A. 清算人は、会社が任意清算の開始後12ヵ月以内に債務の全額を支払う又は支払うことができないかについて言及することができます。そして、清算人は債権者会議を招集しなければならず、その会議の前に、会社の資産と負債について詳細を書面で提出する必要があります。 会議を招集する通知は、会社の業務を清算し、会社の資産を分配するために、会社が指名した清算人ではなく、第三者である清算人を指名する旨を債権者に通知しなければなりません。その後、任意清算の手続きが進められます。
 

Q. 会社が清算手続きを開始した後、債権者から即時支払いの請求があった場合、どのように対処すればよいでしょうか。

 A. その旨、清算人に連絡します。 清算人は通常、債権者に債務の証明を求め、その請求が裁定、承認又は却下されたかどうかを債権者に通知します。 請求の一部又は全部が却下された場合、清算人は、却下の理由を記載した却下通知を債権者に送付します。 清算人の決定に不服がある債権者は、清算人の決定を破棄するよう裁判所に上訴することができます。
 

Q. 全ての債権者に支払った後も資産が残っている場合、どのようになりますか。

 A. 全ての債権者への支払いが完了すると、清算人は会社の株主に資本を返済します。 株主は、会社の株式資本に対するそれぞれの配当に応じて、又は規定に従って支払われます。
 

Q. 会社を清算後、同じ会社名の別会社を設立することはできますか。

 A. 同じ会社名の場合、登記抹消日から6年後、任意清算日から2年後にのみ使用することができます。
 

日本法弁理士・シンガポール外国法弁理士 田嶋麻美

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