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法律相談

2023年8月14日

Q.シンガポールにおける清算手続きについて

Q. シンガポール法人の取締役をしています。近く事業を停止する予定であるため、会社を清算しようと考えています。シンガポールにおいて会社を清算する場合、どのような手続きがあるか教えてください。

 A. シンガポールで自発的に会社を清算する方法としては、①登記抹消(Striking Off)②任意清算(Voluntary Winding Up)の2つの選択肢があります。
 

Q. 会社を清算する場合、登記抹消と任意清算のどちらを選んだらよいですか。

 A. 一般的には、会社が事業を開始したことがない場合又は投資持株会社の場合に資産と負債が取締役会で清算できる場合には、会社は登記抹消の要件を満たす可能性が高いので、登記抹消を選ぶことが多いようです。一方、会社が複雑な負債を抱えている場合、破産している場合、取締役が懸念事項を有する場合又は取締役がより「正式な」プロセスを好む場合には、任意清算を選ぶことが多いです。
 

Q. 登記抹消手続きの方が簡便のようですが、任意清算と比べてデメリットはありますか。

 A. 裁判所は、会社名が登記抹消されてから6年以内であればいつでも、第三者の会社名が登記抹消されたことに対する申請に応じて、会社が登記抹消の時点で事業を継続していた、運営中であった又は会社名が登記し直されていたと判断した場合、会社名を登記し直すことができる点にあります。一方、任意清算の場合、裁判所は、会社の清算人又はその他利害関係者による申請により、清算日から2年以内に会社の清算を無効と判断する権限を有します。
 

Q. 登記抹消と任意清算の手続きの費用はそれぞれどれくらいかかりますか。

 A. 登記抹消の場合、弁護士、監査役、税理士等の専門家へ支払う費用がかかります。 なお、シンガポール会計企業規制庁(以下、「ACRA」)へ申請するための手数料はかかりません。
 
 任意清算の場合、清算人への報酬、管財人費用(管理費用、実費、経費を含む)及びシンガポール国内の新聞で少なくとも2回告知するための掲載費用がかかります。
 

Q. 登記抹消の申請について教えてください。登記抹消の申請にあたり、必要な要件はありますか。

 A. 登記抹消は、会社が事業を営んでいないと認める合理的な理由があり、かつ以下の要件を満たす場合に申請が受理されます。
 
 ・設立以後事業活動を行っていない又は事業を停止して休眠状態であること。
 ・シンガポール内国歳入庁(IRAS) 、中央積立基金(Central Provident Fund Board)その他政府機関に対する未払債務が存在しないこと。更に、すべての申請書類が最新のものであること。
 ・未払法人税が存在しないこと。
 ・手続き中又は懲戒手続き中の案件がないこと。
 ・現在及び将来的にも資産、負債がないこと。
 ・過半数の株主の同意を得ていること。
 
 海外に支店がある場合、登記抹消の前に同様に海外支社を閉鎖するか、当該支店をグループ会社から外さなければいけません。また、資産を清算する手続きとして、会社は銀行口座をすべて解約する必要があります。
 

Q. 登記抹消の手続きの流れを具体的に教えてください。また、手続きにどれくらいの期間を要しますか。

 A. 取締役会及び株主が登記抹消を承認し、ACRAへ登記抹消手続の申請をしたら、第三者の異議申立てがない限り、それ以上の手続きは必要ありません。第三者による異議申立てがあった場合には、会社はそれに応じるために第三者と協議をする必要があります。異議申立ての内容としては、未払いの納税又は未払いの請求に起因した異議の申し立てが多い傾向があります。そのため、会社は登記抹消の申請をする前に、全ての未払いの負債を清算しておく必要があります。
 
 登記抹消に異議がない場合、申請日から約4~5ヵ月で手続きが完了します。ACRAが登記抹消の申請を受理してから30日後に最初の通知が政府官報に掲載されます。異議がない場合は、会社の名前が登記から抹消された旨の通知が、最初の通知から60日後に最終通知として政府官報に掲載されます。
 


 
 次回は、会社を清算するもう一つの選択肢である任意清算の手続きについて詳しく説明します。
 

日本法弁理士・シンガポール外国法弁理士 田嶋麻美

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