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法律相談

2023年6月19日

Q.シンガポールの国有地について

Q. よく利用するゴルフ場の土地が何年か後に、国に返還されると聞きました。シンガポールのゴルフ場は私有地ではないのですか。

 A. シンガポールではゴルフ場の土地を私有化することは出来ず、全てのゴルフ場の土地は国有地であり、リース期間は通常30年となっています。シンガポール全体でも私有地は2~3%と言われており、基本的にほぼ全土が国有地です。
 
 国有地の保有、管理は法務省が行っています。ただし、多くの未利用の国有地については、法務省傘下のシンガポール土地管理庁から長期貸与の形で移管を受け、都心部のものは都市再開発庁が、そして住宅地周辺のものは住宅開発庁が管理している場合が多いようです。
 
 シンガポールは、かつてイギリスの植民地であり、イギリス式の「土地は究極的に国家に帰属する」という理念が広く受け入れられ、政府は土地収用を積極的に行っていました。シンガポールは、都市であると同時に国家でもあります。東京 23 区ほどの限られた面積の土地に、都市としては住居、産業、娯楽、交通機関などのための施設、そして国家としては空港、港湾、道路などを整備する必要があります。限られた面積を有効に活用するため、シンガポール政府が独立以来、長期的かつ包括的に都市計画を進めてきました。政府の計画的で強力な都市計画により、社会基盤の整備、公共住宅の建設、ニュータウンや工業地帯の開発、空港、港湾、緑地公園などの整備が進み、現在では美しい街並みと緑豊かな「ガーデンシティ」の国として世界的に知られるようになりました。
 
 国土有効活用の観点から将来一部のゴルフ場にはリース延長はされないと政府が発表しているので、今後の動向が気になるところです。 消滅するか、もしくは縮小されるゴルフ場などいろいろな状況が想定されます。
 

Q. シンガポールの長期的な都市計画はどのようなものでしょうか。

 A. シンガポールは、平坦で保水能力が乏しい土地のため貯水池を多く必要とするほか、国土防衛のために軍用地も確保しなくてはならないため、限られた国土を長期的な視点でいかに有効に利用するかが独立当初から大きな課題となっています。
 
 シンガポールの都市計画は、長期計画として発表されてきたコンセプトプランと、コンセプトプランの中に書かれた長期戦略を具体的に策定した実践計画の位置づけで10~15年を期間とする中期計画として発表されたマスタープランに基づき、計画的に進められてきました。例えば、将来の人口増加予測を踏まえた長期的で持続可能な国土の利用計画である「土地利用計画(Land Use Plan to Support Singapore’s Future Population)」がコンセプトプランに代わるものとして発表され、これに基づく中期計画として発表されたマスタープランに沿って、より良い生活環境の整備や活気に満ちた経済を維持し続けるための土地の確保、開発が進められています。例えば、狭い土地を一気に開発しないように、国有地の中から年に数ヵ所のみを払下げし、その土地も住宅、商業地、オフィスなどの専有%も指定されたものがあります。その他、水の安定供給や水の再利用技術の向上、出産一時金や補助金の支給による少子化対策等も挙げられます。
 

Q. 国土のほとんどが国有地であるということは、シンガポールにおける不動産取引の対象に土地は含まれないのでしょうか。

 A. 土地は最終的には国に帰属するとされ、土地に対する自由保有権の設定を原則禁止しています。国は個人や企業に対して不動産権 (Estate)を付与し、不動産権が主に不動産取引の対象となっています。不動産権には、Fee Simple, Life Estate, Estate in Perpetuity, Leasehold Estateの4種あり、個人や企業が取得するのは基本的にLeasehold Estateとなります。
 
 これは、契約に基づき賃料を支払うことを条件に、一定期間排他的に利用及び占有できる権利であり、その中にも4つの種類(Fixed Term Tenant, Periodic Lease, Tenancy at Will, Tenancy at Sufferance)が存在します。個人あるいは国以外の団体に対し、国有地の土地所有権を譲渡することは一定の場合にしか認められていません。また、一般的に外国人に対しては土地所有権を制限しています。
 
 政府が未利用の国有地を民間企業や個人に利用させる場合、売却ではなく長期貸与の形式がとられるのが一般的であり、貸与期間は99年間が多いようです。
 
 なお、土地の買収は、政府に強制的な土地収用権限を与えている土地収用法(Land Acquisition Act)に基づいて行われています。具体的には、土地収用を必要とする公共事業を政府が行う場合、関係省庁の協議の後、国会で議決され、公告等の手続きを経て買収が行われます。
 

日本法弁理士・シンガポール外国法弁理士 田嶋麻美

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