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法律相談

2023年4月6日

Q.シンガポールにおける電気自動車(EV)の普及について

Q. シンガポールではガソリン車、ディーゼル車が将来的に廃止されると聞きました。今後、ガソリン車やディーゼル車に乗れなくなるのでしょうか。

 A. 2021年、シンガポール政府が環境行動計画「シンガポール・グリーンプラン2030」を発表したことは周知の通りです。同プランは、2030年までに国を挙げて取り組むべき環境政策の包括的なプランになっています。政府は同プランにおいて、持続可能な環境を整備して国民の暮らしを守ると同時に、環境に優しいエネルギー源を確保し、クリーンな燃料車の普及を後押しする方針を示しています。具体的には、ガソリンやディーゼル燃料の内燃機関車を2040年までに段階的に廃止し、電気自動車 (EV)を始めとする環境に優しい燃料車へと転換するとの目標が設定されました。ディーゼル燃料の乗用車およびタクシー車については、2025年から新規登録を廃止する方向で調整が進んでいます。
 

Q. 街中でEV充電スタンドやEVカーシェアリングをよく見かけるようになりました。シンガポールでは日本より電気自動車が普及しているのでしょうか。

 A. 日本では、まだまだガソリン車が主流ですが、世界では「脱ガソリン車・ディーゼル車」を掲げて、EVにシフトする動きが加速しています。シンガポールでは、EV普及拡大を促進するため、EV購入のインセンティブの導入や、EVメーカーの製造拠点の誘致、公団住宅の駐車場へのEV充電スタンドの設置等、環境整備が進められています。
 
 2022年11月30日、シンガポールの国会で「EV充電法 (the Electric Vehicle Charging Bill)」が可決され、2023年下半期からEV充電インフラに関して、(1) 新築建物におけるEV充電器の設置義務、(2) 既存の建物がEV充電施設を再整備する際に、EV充電設備の導入について、現在総会で90%以上の賛成が必要であるのに対し、総会で半数以上の賛成をもって可決となります。
 
 シンガポールを含めた世界の新車販売台数の統計を比較してみると、シンガポールでは、2021年の新車販売台数に占めるEVは、2020年の約4.2%から約8.3%と顕著な増加傾向にあります。一方、日本では約0.9%、これは世界各国の普及率と比べても特に低い水準です。アメリカは、約2.9%と日本よりも普及が進んでいることがわかります。ヨーロッパでは、EVの購入補助金を出すなどの手厚い優遇策を取っていることや、ヨーロッパの主要メーカーがEVの品ぞろえを増やしていることから、新車販売台数に占めるEVの割合も11%と全体のシェア率は1割を超えており、日本やアメリカを凌ぐ大きな数字となっています。中国ではEVをはじめ、プラグインハイブリッド自動車(PHV)や燃料電池車両(FCV)を含む電動化車両を総じて「新エネルギー車(New Energy Vehicle; NEV)」と呼び、自動車メーカーには一定の販売台数をNEVにすることが義務付けられています。2021年の新車販売に占めるNEVの割合は約13%で、そのうちEVは約8割と急速に普及していることがわかります。
 

Q. EVはガソリン車と比較して高額な印象があります。EVを購入する際の優遇措置等はありますか。

 A. シンガポール政府はEVの普及拡大に向けて、購入を促すためのインセンティブを打ち出しており、ガソリン車とEVの価格差が縮小されつつあります。2018年から導入された「乗用車排出スキーム(VES)」による、低排出ガス車の購入に対する払い戻し額の増額、2021年1月にEVを対象に追加登録料(ARF)の45%を払い戻す「EV早期採用インセンティブ」を導入しました。
 
 EVの製造も、シンガポール国内で計画されています。EVの国内生産が本格軌道に乗れば、輸入に頼らず安定した供給が行えること、価格の適正化、車両のメンテナンスが可能になる等、国内での普及が加速されるものと期待されています。
 

日本法弁理士・シンガポール外国法弁理士 田嶋麻美

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