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2023年9月1日

訪日タイ人数が訪タイ日本人数を上回る ~ 円安効果で今年上半期に初の逆転

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 円安の進行による「お得感」で、このところ日本を訪れる外国人観光客が増えつつあるとのニュースをよく目にするが、訪日タイ人数が訪タイ日本人数を上回ったことは印象的だ。今年上半期に日本を訪れたタイ人が約50万人に達したのに対し、タイを訪れた日本人は約32万人にとどまった。以下、その状況を「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認してみる。
 

上半期の訪日タイ人50万人、訪タイ日本人数を上回る

 観光・スポーツ省の集計によると、2023年上半期の訪タイ日本人数は32万7,041人となり、日本政府観光局(JNTO)集計の訪日タイ人数(49万7,700人)を初めて下回った。タイ国政府観光庁(TAT)のユタサック長官は、日本経済の低迷や円安などの影響で日本人の海外旅行意欲が減退する一方、タイ人にとっては円安が追い風になったとの見方を示した。25日付バンコクポストなどが伝えた。
 
 前年同期比では、訪日タイ人数が44.0倍、訪タイ日本人数が6.7倍と大きく伸びた。ただ、新型コロナウイルス流行前の19年同期比では、それぞれ27.2%減、62.2%減と回復途上にある。訪日外国人全体に占めるタイ人の割合は23年上半期に4.6%となり、19年同期の4.1%から上昇した。
 
 これまでは訪タイ日本人数が訪日タイ人数を上回っていた。訪日タイ人数は、◆19年=131万8,977人◆20年=21万9,830人◆21年=2,758人◆22年=19万8,037人――と推移する一方、訪タイ日本人数は◆19年=180万6,340人◆20年=32万331人◆21年=9,461人◆22年=29万146人――だった。[「亜州ビジネスASEAN」 7月26日付ニュース]
 


 
 ニュースにあるように、上半期の訪日タイ人数は44.0倍に拡大。訪タイ日本人数も6.7倍と急増しているが、その差は桁違いだ。円安の効果が最大の要因とはいえ、両国の海外旅行意欲(=消費マインド)に大きな差があるのも否めない。コロナ禍もあって、ここ数年のタイ経済は他地域と同様に伸び悩んでいるものの、将来の成長が期待できる新興国は、先進諸国よりも消費マインドに勢いがあると言えよう。
 

 
 なお、訪タイ日本人数の伸びが相対的に小さいとは言え、タイの観光業界はコロナ禍から着実に立ち直りつつある。2020年の外国人来訪者数は670万人、21年は約43万人に低迷したが、22年は前年比26倍増の1,115万人を記録。23年は上半期の時点で1,291万4,691人に拡大するなど、すでに22年通年を上回っている。
 

 
 23年上半期の外国人来訪者数を国・地域別でみれば、マレーシア=210万4,714人(10.4倍)、中国=144万3,119人(25.6倍)、ロシア=79万1,574人(11.1倍)、韓国=76万3,079人(13.1倍)、インド=76万1,463人(3.3倍)――の順に多かった。新型コロナ流行前に全体の4分の1を占めて最多だった中国は、22年通期に27万3,567人と全体のわずか2.5%にとどまったが、中国政府のゼロコロナ政策解除によって足元で急増に転じる流れだ。
 
 日本からの来訪者数をみれば物足りなさを感じるものの、タイの観光業界は全体として力強い回復傾向を示しているといえよう。
 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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