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2023年8月1日

日系メーカー優位のアジア市場を狙う中国勢 ~ BYDなどがEVで食い込む

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 日系メーカーが大きな存在感を示していたアジア・太平洋地域の自動車市場だが、このところ中国勢の追い上げに直面しているとのニュースが目につく。言うまでもなく、日本が後れを取っている電気自動車(EV)が販売の主役になりつつあるためだ。以下、その現状を確認してみる。
 
 マークラインズがまとめた今年5月の調査データによると、アジアとオセアニアのEV販売台数は商用車・乗用車の合計で前年同月比50%増の53万台に拡大。うち特に伸びが目立つタイとオーストラリアでは、それぞれ13倍の5,000台と15倍の7,000台に膨んだ。自動車販売全体に占めるEVのシェアは、両国そろって前年同月の0.5%から7%に急上昇。日本の現状(乗用車に占める6月のEV販売比率は2.3%)と比較して、両国の自動車市場でEVが成長のけん引役になっていることが分かる。
 
 タイに関しては、EV販売で圧倒的な強さを示しているのが中国の比亜迪(BYD)。EV販売のシェアは、同国内で約40%を占めるという突出ぶりだ。
 

タイ:上期のEV新車登録3.1万台、BYDがシェア4割弱に

 運輸省陸運局の集計によると、2023年上半期の電気自動車(EV、7人乗り以下の乗用車のみ集計)の新車登録台数は3万1,514台だった。ブランド別では中国EV最大手の比亜迪汽車(BYD)が1万1,171台でシェア35.4%を占め首位だった。
 
 2位以下は◆中国・合衆新能源汽車の「ナタ汽車(NETA)」=5,955台◆米テスラ=5,095台◆中国・上海汽車の「MG」=4,995台◆中国・長城汽車の「欧拉(オーラ)」=2,471台◆スウェーデンのボルボ=893台◆独BMW=509台――が続いた。
 
 6月のEV新車登録台数は7,602台。ブランド別では◆ナタ汽車=2,203台◆BYD=1,858台◆テスラ=1,225台◆欧拉=959台◆MG=933台――の順に多かった。5月まではBYDが首位を堅持していたが、6月はナタ汽車が浮上した。
 
 BYDは22年11月にタイの乗用車市場に参入。小型スポーツ多目的車(SUV)タイプのEV「ATTO3(元プラス)」を発売した。一方、ナタ汽車は22年8月に同タイプの「ナタV」を発表してタイ市場に参入した。[「亜州ビジネスASEAN」 7月9日付ニュース]
 


 
 そのBYDだが、今度は南米最大の市場であるブラジルへの攻勢を加速させる方針を打ち出した。30億レアル(約6億2,000万USドル)を投じ、現地に新エネルギー車(NEV)やバッテリー材料の生産ラインを建設する計画を明らかにしている。欧米や日本のメーカーが高いシェアを占めているブラジル市場も、今や中国勢のターゲットにされた格好だ。
 

BYDがブラジルに工場3ヵ所新設、24年に操業開始へ

 中国の新エネルギー自動車(NEV)大手、比亜迪(BYD:1211/HK)はこのほど、ブラジルで工場3ヵ所を建設する計画を明らかにした。総投資額は30億レアル(約890億円)を想定。建設地は北東部バイーア州の工業団地を予定している。香港メディアが5日伝えた。
 
 うち1ヵ所はNEV商用車(バス、トラック)、ほか1ヵ所は乗用車の生産を計画し、年産能力は15万台を予定。2024年内の操業開始を計画する。現地で約5,000人の雇用を創出する見込みだ。
 
 BYDは2022年10月、米フォードが閉鎖したバイーア州サルバドール工場を引き継ぐことで同州政府と覚書を交わしている。フォードは21年に同工場での生産を終了した。
 
 BYDは南米最大の自動車マーケットを擁するブラジルに注目している。新車販売に占める純電気自動車(BEV)、ハイブリッド車(HEV)の比率について、同社は足元の2.4%から25年に10%、30年に30%まで拡大するとの見方を示している。[「亜州ビジネス中国」 7月5日付ニュース]
 


 
 なお前述したタイの自動車市場に関し、EVに限定せず全体で見た場合は、依然として日系の独断場と言える。企業別の販売シェアは、トップのトヨタが3割以上を押さえ、日系メーカーの合計では約85%と圧倒的だ(2022年)。
 

 
 残念ながら、この構図はEVの台頭によって変化する可能性が高い。長らく日系メーカーの牙城となっていたタイの自動車市場だが、それほど遠くない時期に勢力地図が塗り替えられることとなろう。
 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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