2023年7月3日
カンボジアで高まる中国の存在感 ~重要インフラ案件を政府系企業が相次ぎ押さえる
大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。
西側先進諸国の間で米国主導の対中経済包囲網が構築されていく一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)では中国との経済関係を緊密化する流れが表面化している。特にカンボジアでは、重要インフラ案件を中国企業に委ねる動きが目立つ状態だ。中国政府系ゼネコンは今年5月、カンボジア南部の大型港湾プロジェクトを受注。また6月にも、同じく政府系ゼネコンが国内で2番目となる高速道路の建設に着工した。以下、これらプロジェクトを「亜州ビジネスASEANニュース」で確認しつつ、中国がASEANの重要インフラ案件に深く関与しはじめている実態を改めてクローズアップしたい。
カンボジア第2の高速道路、中国路橋工程が着工
カンボジアで6月7日、プノンペンとベトナム国境の南東部スバイリエン州バベットを結ぶ高速道路の起工式が行われた。中国交通建設集団(CCCC)傘下の道路建設会社、中国路橋工程(CRBC)が投資・建設する。国内第2の高速道路として、2027年の完成を目指す。中国新聞網などが伝えた。
中国路橋工程はBOT(建設・運営・譲渡)方式で開発を請け負う。全長135.1キロメートルの4車線道路で、投資総額は14億USドル。工期は4年、運営期間は50年となっている。
昨秋に国内初の高速道路として開通したプノンペンと南部の港湾都市シアヌークビルを結ぶ高速道路とは、プノンペンの第3環状道路を通じて接続する。同高速道も中国路橋工程が建設した。
ベトナムでは、バベットと国境を接するモクバイとホーチミン市を結ぶ約65キロメートルの高速道の建設計画が進められており、完成後はプノンペン~ホーチミン市間の物流改善が期待される。[「亜州ビジネスASEAN」 6月8日付ニュース]
カンボジアのカンポット港建設、中国企業が受注
カンボジア南部のカンポット州で港湾事業を手掛けるカンポット・ロジスティクス・アンド・ポートは、カンポット多目的港の建設の一部を中国の中国港湾工程(CHCE)に発注することで契約を交わした。プノンペンポストなどが伝えた。
同港の総投資額は15億USドル。ボコール地区の600万平方メートルの土地に整備する。港湾の水深は15メートルとし、10万載貨重量トン(DWT)級船舶の入港を可能とする。2025年までの第1期では2億USドルを投じ、その後は第3期まで12年かけて拡張。コンテナ処理能力は第1期に30万TEU(20フィートコンテナ換算)とした後、30年までに最大60万TEUに引き上げる。
国内の主要港であるプノンペン港とシアヌークビル港の処理能力を補完する第3の大型港となる予定。港湾内には経済特区や自由貿易区、物流センター、倉庫エリアなども設ける。ほかに工場や製油所、住宅、観光施設、客船ターミナルなどの投資も呼び込む。
建設工事には中国の上海建工と路橋集団国際建設(CRBC)も参画する。昨年5月に第1期開発の起工式が行われた。[「亜州ビジネスASEAN」 5月9日付ニュース]
ASEAN諸国の重要インフラ案件に中国政府系企業が関与していることについては、「ASEANを中国の勢力下に置く動き」と警戒する見方が少なくないが、経済支援を受けたい域内の国々にとっては、背に腹は変えられない状況。コロナ禍の2020年にマイナス成長を強いられたカンボジアなどは、現実的に中国の支援を断る選択肢がないと言えよう。
なお、中国による重要インフラ案件の関与といえば、カンボジア隣国のラオスで2021年末に開業した国際長距離鉄道「中老鉄路(中国ラオス鉄道)」も話題になった。こちらは、中国政府が掲げる「一帯一路」政策に沿って、中国鉄路昆明局が運営にあたっている。最後に、同鉄道の活況ぶりを伝えるニュースも転載しておく。
中国ラオス鉄道の旅客数、1年半で1,600万人に
2021年末に開業した国際長距離鉄道「中老鉄路(中国ラオス鉄道)」の旅客数は、23年5月23日までに累計1,600万人に達した。うち国境を超える旅客は2万人を上回っている。中国鉄路昆明局集団の情報として、中国政府系メディアが24日付で報じた。
旅客の内訳は中国区間が1,353万人、ラオス区間が247万人。1日当たりの平均運行本数(普通列車)はそれぞれ42本(ピーク時は72本)、6本(同10本)だった。
同鉄道は中国の雲南省昆明市とラオスの首都ビエンチャンを結び、全長が1,000キロメートルを超える。中国区間は全長508キロメートルで、ほぼ雲南省内が占める。中国の国家戦略「一帯一路」構想に基づいて総額374億3,000万人民元(約7,344億円)を投じ、2016~21年にかけて建設。2021年12月3日に全線開通した。[「亜州ビジネスASEAN」 5月24日付ニュース]
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