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2023年6月1日

ベトナム:ホーチミン最大の靴メーカーが6千人を追加解雇、外需冷え込みで苦境に

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)各地で現在、物価高に伴う世界的な景気低迷が輸出産業を苦しめているが、その被害が最も早く表れると言われている繊維・アパレル業界は特にダメージが深刻だ。ベトナムの同業界も例外ではなく、米国など主要輸出先の消費冷え込みにより、ホーチミン最大の靴メーカーで大量の追加解雇が発表された。台湾系のポウユエン・ベトナム(宝元)は今年2月、約2,400人のリストラに踏み切ったばかりだが、6~7月をめどに新たに約6,000人を解雇する方針を打ち出したのだ。以下、輸出業者の苦境を象徴する今回の大規模リストラを「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認しつつ、外需・輸出の冷え込みがベトナム経済全体の足を引っ張る構図を改めて検証してみる。
 

ホーチミン最大の靴工場、新たに6千人近くを解雇へ

 運動靴受託生産の世界最大手、台湾・宝成国際集団(PCG)傘下でホーチミン最大の履物メーカーであるポウユエン・ベトナム(宝元)は、6~7月に従業員5,744人を解雇する。輸出受注の減少を受けたもので、2月にも約2,400人を解雇していた。ザ・インベスターが14日付で伝えた。
 
 物価高に伴う世界的な景気後退で運動靴の輸出受注が減ったことから、解雇や労働時間の削減を進めている。対象となった労働者は昨年末以降で2万人に上り、新型コロナウイルス流行前の労働者数の10%に相当する。
 
 解雇対象を決める労使会議がこのほど開かれ、会社側は◆生後12ヵ月未満の子供を持つ労働者◆妊娠中の労働者◆障害を持つ労働者――を解雇対象にしないことを約束した。また、解雇対象となった労働者の失業保険受給や職業訓練、職業紹介をホーチミン市ビンタン区の関係機関や労働連盟が支援することにも合意した。[「亜州ビジネスASEAN」 5月16日付ニュース]
 


 
 もちろん、受注減に苦しむのは繊維・アパレル以外の輸出業者も同様。ホーチミン市商工局によれば、同市からの輸出額は今年第1四半期に前年同期比17%減の100億USドルまで落ち込んだ(22年ぶりの下げ幅を記録)。同局のグエン・グエン・フオン副局長は、輸出関連の業者が過去に例のないほどの苦境に立たされていると説明した上で、「少なくともこの状況が今年半ばまで続く」と悲観した。
 
 こうした中、足元で輸出の冷え込みがベトナム経済全体の足を引っ張る構図が浮き彫りになりつつある。サービス業が堅調な一方、輸出業者をはじめとする製造業の苦境で国内総生産(GDP)の伸びが鈍化しているのだ。その様子についても「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認しておく。
 

ベトナム:第1四半期のGDP成長率が3.32%に減速、製造業は前年割れ

 ベトナム統計総局は29日、2023年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率が3.32%だったと発表した。新型コロナウイルス禍を乗り越えて6四半期連続のプラスとなったが、成長率は6四半期中で最低。サービス業が伸びる一方、製造業は前年を割り込んだ。
 
 成長率を産業別にみると、第3次産業(サービス業)の成長率が6.79%で最も高かった。中でもホテル・外食サービスが25.98%と大幅な伸び。新型コロナ流行が落ち着き、22年3月から外国人観光客の受け入れを再開したことが大きい。
 
 第1次産業(農林水産業)の成長率は2.52%。農業が2.42%、林業が3.66%、水産業が2.68%だった。
 
 第2次産業(工業・建設業)はマイナス0.40%。建設業はプラスの1.95%だったが、工業がマイナス0.82%と、11年以降で最も大きい落ち込みだった。工業を詳細にみると、鉱業がマイナス5.60%、製造業がマイナス0.37%など。物価高による世界的な需要減退で輸出受注が落ち込んだことなどが響いた。
 
 GDP成長率を支出別にみると、消費は3.01%、投資は0.14%それぞれ増えた。一方、輸出はマイナス8.33%、輸入はマイナス10.52%だった。
 
 ベトナムのGDP成長率は、新型コロナ流行で厳格な行動制限を発動した21年第3四半期にマイナス6.03%と統計開始以来、最大の下げを記録。その後はプラスを維持しているが、コロナ禍の反動効果はこのところ薄れている。世界的な物価高に伴う需要減退も成長の重しだ。
 
 政府は23年の経済成長目標を6.5%に設定。新型コロナ流行の反動効果が薄れるほか、世界的な景気後退の影響を受け、22年の8.02%から減速するとみている。[「亜州ビジネスASEAN」 3月29日付ニュース]
 


 

 
 政府が掲げた23年の経済成長目標(6.5%)は、先進諸国と比べた場合はなお高い水準といえるものの、本来であれば7~8%台の伸びが見込まれた可能性もある。それだけに、外需の回復が期待されるところだ。
 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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