2023年10月2日
インド自動車大手マヒンドラがタイ農機市場に参入、日系の独壇場に割り込む
大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。
このところ「日系メーカー優位の東南アジア自動車市場で、中国系の電気自動車(EV)メーカーがシェアを急上昇させている」というニュースを多く見かけるが、今年8月にはインド自動車・農業機械大手のマヒンドラ・アンド・マヒンドラによるタイ農機市場への参入が話題になった。タイの農機市場は現在、日系メーカーがほぼ独占しているものの、自動車市場と同様に新たなライバルが出現した格好だ。その内容を「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認しておく。
タイ:印マヒンドラが農機市場参入へ、来年にトラクター発売
インドの自動車・農機大手マヒンドラ・アンド・マヒンドラは、来年初めにタイの農機市場に参入すると発表した。世界戦略トラクター「OJA」の投入に向け、現在は駐在員事務所の設置を進めている。タイを皮切りに東南アジアの各国に進出する方針。バンコクポストが22日付で伝えた。
タイとインドの自由貿易協定(FTA)を利用し、5%の輸入関税で完成品をタイに送る。5年以内に市場シェア5%を獲得できると見込む。タイを足がかりとして来年中にインドネシアとフィリピンへの進出も目指す。
「OJA」は三菱マヒンドラ農業機械と協力して開発。先週に南アフリカで正式発表した。[「亜州ビジネスASEAN」 8月23日付ニュース]
タイの農機市場は前述したように、クボタやヤンマーなど日系メーカーの独壇場となっているため(首位のクボタは市場シェアが約8割)、これに割って入るのは簡単でないと思われるが、そのマヒンドラ自身も日本メーカーとの関係が深い。2015年には三菱農機の株式33%を所得し(三菱農機は「三菱マヒンドラ農機」に社名変更)、資本・技術提携により期待の新製品「OJA」を開発。タイを皮切りに、将来的には東南アジアの各国に進出する方針を打ち出している。安さを武器にするだけではなく、高い技術も手に入れたインド大手メーカーの参入は、当然ながら日系メーカーにとって潜在的な脅威になり得よう。
マヒンドラは現在、自国インドのトラクター市場で41%のシェアを占めるトップ企業。インド以外の50カ国でも製品を販売するなど、世界各地で徐々に存在感を高めつつある状態だ。タイで来年から、どのような攻勢をかけていくか――。また、日系メーカーがどのように防戦していくのかが注目される。
亜州ビジネスASEAN