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2021年12月3日

アセアン:Eコマース市場が急拡大 ~2030年に6倍増の1兆米ドル規模へ

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 アセアン域内で今、Eコマースに代表されるインターネット経済の市場が急成長しつつある。シンガポール政府系投資会社の予測では、2030年の市場規模は域内全体で1兆米ドル(約115兆円)に達し、現在の6倍に膨れ上がる見通しだ。Eコマースで圧倒的な存在を誇る中国の約半分にとどまるとはいえ*、域内の総人口が6億6,000万人と中国の半分以下にすぎない点を踏まえれば、その成長性と存在感が大きくクローズアップされることとなろう。

※JETROによると、中国のEC小売額は2020年の時点で11兆7601億人民元(約210兆円)と世界最大。

 まず、前述したテマセクの分析内容を「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認しておく。

 

アセアン:東南アのネット経済、2030年に6倍の1兆米ドルへ

 シンガポール国営投資会社のテマセク・ホールディングスは10日、米グーグルなどと行った共同調査の結果を発表し、東南アジアのインターネット経済が2030年に最大1兆米ドル規模となり、21年比で約6倍に成長する見通しを明らかにした。新型コロナウイルス流行を背景に消費動向が変化しており、デジタル化の進展が加速すると分析。小売消費額に占める電子商取引(EC)の割合が現在の10%から50%に、決済額に占める電子決済の割合が40%から70〜80%に高まると予測した。
 
 国別では、最大市場のインドネシアが5倍の3,300億米ドルに拡大する見通し。これに◆ベトナム=11倍の2,200億米ドル◆タイ=5.5倍の1,600億米ドル◆フィリピン=9倍の1,500億米ドル◆マレーシア=3.5倍の700億米ドル◆シンガポール=3.5倍の500億米ドル――が続くとみている。
 
 21年の東南アジアのインターネット経済は前年比49%増の1,740億米ドルと予測した。その後は年平均20%のペースで成長し、25年に3,630億米ドルに達する見通し。[「亜州ビジネスASEAN」 11月14日付ニュース]
 


 
 こうした急成長が見込まれる背景には、アセアン域内のネット利用頻度が他の地域に比べて突出して高いことがある。国別の1日平均ネット利用時間をみれば、約11時間のフィリピンが3年連続で世界トップ。またマレーシアが6位、インドネシアが8位、タイが9位にランクインするなど、域内4ヵ国がトップ10に名を連ねた。これについても「亜州ビジネスASEAN」ニュースで確認しておく。
 

アセアン:フィリピンのネット利用時間、3年連続で世界一

 英国のインターネット関連企業などが発表した報告書「グローバルデジタル2021」によると、国別のインターネット利用時間は、フィリピンが1日平均10時間56分で3年連続の世界トップだった。前年より1時間11分増えており、新型コロナウイルス対策の活動制限が影響したとみられる。4年前の調査で首位だったタイは、8時間44分で前年の5位から9位に後退。東南アジアではマレーシア(6位、9時間17分)とインドネシア(8位、8時間52分)も上位に入った。
 
 デジタルマーケティング事業の英ウィー・アー・ソーシャルと、ソーシャルメディア管理を手掛けるカナダのフートスイートが発表した。2位はブラジル、3位はコロンビアだった。
 
 携帯端末でのネット利用時間もフィリピン(5時間54分)が世界首位。タイ(5時間7分)は3位、インドネシア(5時間4分)は4位だった。フィリピンは交流サイト(SNS)の利用時間も4時間15分で世界最長だった。
 
 一方、インターネット通販の利用率と、オンライン出前サービスの利用率(いずれも過去1ヵ月以内の利用者が占める割合)は、共にインドネシアが首位。ネット通販の利用者が87.1%、出前が74.4%に上った。ネット通販の利用率はタイやマレーシアでも80%を超えており、携帯電話での利用に限ると、世界首位がインドネシア、2位がタイ、3位がフィリピン、4位がマレーシアと東南アジア勢が上位を独占している。[「亜州ビジネスASEAN」 2月2日付ニュース]
 


 
 アセアン域内の国々はまた、単にネット利用時間が長いだけでなく、実際にEコマースを行う頻度も高い。We Are Social「デジタル2021」の調査によると、1週間に1回以上オンラインショッピングを行う人の割合は、フィリピンが52.1%で世界首位、タイが50.2%で4位、マレーシアが49.1%で5位となっている(世界平均は39.3%)。3ヵ国がトップ5にランクインするなど、アセアンはネットとの親和性が極めて高い地域であることが分かる。
 
 このように、アセアン各国は全体としてEコマース市場が急拡大する局面にあるが、中長期的に最も高い伸びを示すと考えられているのはベトナム。テマセクの調査によると、ベトナムは2030年までに市場規模が現在の11倍まで膨らみ、タイを抜いてインドネシアに次ぐ域内2位に躍り出るという。経済そのものの高成長が見込まれるだけあって、Eコマースの分野でもベトナムの存在感は突出して大きいといえそうだ。 
 

 

亜州リサーチASEAN編集部
亜州ビジネスASEAN

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