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2021年11月3日

タイ:ペットフード業界が活況、新型コロナの追い風に乗る

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 新型コロナでタイ経済が冷え込んでいるにもかかわらず、同国のペットフード業界は活況を呈している。世界各地で「ステイホーム」の動きが広がる中、犬や猫などのペットを飼いたいという需要が高まっているためだ。中でも目立つのは、先進国向けを中心とする海外出荷の伸び。タイのペットフード輸出量は今年、ドイツ、米国に次ぐ世界3位に躍り出る見通しだ(昨年の4位から1ランク上昇)。こうしたなか、最近は異業種からペットフードに参入する動きもみられる。まず、足元の好調ぶりを亜州ビジネスASEANニュースで確認しておきたい。
 

タイ:ペットフード輸出量、1~9月は31%増=農業省

 農業・協同組合省畜産局のソラウィット局長は、2021年1~9月のタイのペットフード輸出量が前年同期比31%増の52万5,966トンだったことを明らかにした。新型コロナウイルス流行による外出自粛や在宅勤務の増加を背景に、犬や猫をはじめとするペットへの関心が高まっていることがプラスに影響した。21年は、輸出量でドイツ、米国に次ぐ世界3位に1ランク上昇するとみている。18日付ターンセタキットなどが伝えた。
 
 1~9月の輸出先別では、米国が全体の20%を占め最大。これにマレーシアが15%、フィリピンが12%、インドネシアが7%で続いた。このほか、日本や中国、欧州連合(EU)などにも輸出している。製品の種類別では、缶タイプが55%、粒タイプが41%を占めた。
 
 輸出額は計405億5,300万バーツ(約1,390億円)だった。タイ産ペットフードはコスト上昇などのマイナス要因がなければ、21年通期で480億バーツまで拡大する見通しという。[亜州ビジネスASEAN 10月19日付ニュース]
 


 
 タイのペットフード輸出量は年々増加する傾向を示していたが、コロナ禍に見舞われた20年、21年の伸びが特に顕著。20年の成長率は13%を記録し、19年の4%を大幅に上回った。また前掲ニュースのように、21年は3割超の成長ペースで推移している。
 

 
 冒頭で触れたように、成長期待の高まるペットフード市場には類似業種(食品等)や異業種から参入する動きが表面化している。最近の亜州ビジネスASEANニュースを追ってみても、「タイ:皮革のインターハイド、犬用おやつを生産販売」、「タイ:食品NRF、ペットフード販売ボタニーを買収」、「タイ:ツナ缶のタイユニオン、南部にペットフード専門工場」、「タイ:水産加工CMCF、ペットフード事業を強化」などと進出ラッシュが続いていることが分かる。
 
 特に本業が振るわない場合は、成長期待の高まるペットフード事業に商機を見出しているようだ。以下、その典型ともいえる水産加工業者のニュースを紹介する。
 

タイ:水産加工CMCF、ペットフード事業を強化

 水産加工のチョーティワット・マニュファクチャリング(CMCF)は、ペットフード事業を強化する方針を明らかにした。売上高に占める割合を30%まで引き上げる目標。水産加工食品は価格競争により利益率が低下するとみていることから、ペットフードの強化でリスクを低減し、長期的な成長を目指す。24日付バンコクポストなどが伝えた。
 
 ソンブーン最高財務責任者(CFO)によると、ペットフード市場は年率6%のペースで成長しており、水産加工品の5%を上回っている。同社の2020年の売上高は67億4,000万バーツ(約220億円)で、水産加工品(缶詰・真空パック)が85%を占め、ペットフードは11%にとどまった。ただ、21年第1四半期には15%まで上昇しており、近い将来は30%に達すると見込む。
 
 現在はペットフードのOEM(相手先ブランドによる生産)製品を米国や英国、イタリア、ロシア、中国などに供給。今後はアジアで販売を拡大するほか、自社ブランド製品の投入も検討している。
 
 同社は南部ソンクラー県ハジャイに2工場を構え、生産能力は水産加工品とペットフードの合計が年8万7,900トン、魚粉が1万4,000トン。このほか、インドネシアの同業ラウティンド・シナジー・スジャトゥラ(LSS)に49%を出資しており、LSSは加工用の冷凍ツナ製品などを年1万2,700トン生産している。[亜州ビジネスASEAN 9月27日付ニュース]
 


 
 このニュースにあるように、苦戦が続く水産加工ビジネスは先行きが不透明なため(下図の輸出動向を参照)、既存事業からの応用が利きやすいペットフード事業に活路を求めているといえよう。
 

 
 なお、列挙したニュースの一つ「タイ:ツナ缶のタイユニオン、南部にペットフード専門工場」は、タイユニオン社による国内ビジネスの話題だが、同社はペットフード事業に関し、今年6月に日本市場へも進出した。最後に、そのニュースを紹介しておく。
 

タイ:タイユニオン、日本にペットフード販売会社を設立

 ツナ缶世界最大手のタイユニオン・グループは1日、日本にペットフードの輸入販売会社を設立したと発表した。日本市場で自社のペットフードやペット関連製品の販売拡大を図る。
 
 新会社ジャパンペットニュートリション(本社:東京都中央区)を先月に設立した。資本金は500万円。子会社のソンクラー・キャニングが90%、個人が10%を出資した。[亜州ビジネスASEAN 6月2日付ニュース]
 

亜州リサーチASEAN編集部
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