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危うし!日系企業の常識・非常識

2020年11月11日

現地法人の多くのローカルマネジャーが本来やるべき2つのマネジメント

 ハイエンゲージメントな組織を作るのに重要な役割を担うのが、マネジャーです。マネジャーが本来行うべき役割をしっかりと担っているかどうか、がポイントになります。
 
 ただ一方で、世界視点で見ると、日本企業はマネジャー向けの教育が疎かで、マネジャーの役割が曖昧になっているケースが多くあります。また、プレイングマネジャーというプレーヤーとマネジャーの両方を兼ねているという存在自体が世界の中では一般的ではありませんが、日本ではバブル崩壊後普通になっていて、よりマネジャーの役割を曖昧にしていると思います。
 
 さらに、海外現地法人によっては、結果を出したからという理由だけでマネジャーという肩書きをつけたものの、プレーヤーとして動いているだけだったり、マネジャーとしての期待役割が曖昧だったりするケースが多く見られるようです。
 
 この記事では、改めて組織の要でもあるマネジャーが本来行うべき役割について考えてみたいと思います。
 

マネージャーのミッション

 マネジャーの最も重要なミッションは、当たり前ですが「チームとしての結果・成果に責任を持つこと」ことです。そのチームとしての結果を出すために、行うべきマネジメントは2つあります。それは、パフォーマンスマネジメントと、ピープルマネジメントです。
 

 

パフォーマンスマネジメント

 パフォーマンスマネジメントとしては、期待する目標・成果を明確にして、それに対しての進捗がどのようなものかを把握し、もし問題があれば、問題解決を行いつつ、結果が出るように管理していくものです。
 
 こちらは、リモートワークの普及によって、短期間の目標設定サイクルと、プロジェクトマネジメントのクラウドツールなどを活用して進捗状況などを「見える化」しつつ、短いサイクルで進捗確認をきちんと行っていくことが求められています。
 

ピープルマネジメント

 もう一つのマネジメントがピープルマネジメントです。メンバー一人ひとりのエンゲージメントを高く保つように関わったり、メンバーを育てたり、職場環境を良くしたり、メンバー同士がチームとして機能するような組織作りに重点を置いたマネジメントです。
 
 この2つのマネジメントは、求められる行動特性が異なるため、どちらかは得意だけれども、どちらかは苦手というケースが多く存在します。苦手な方は、トレーニングなどでマネジャーのスキルアップを図るか、チームの中で役割分担を行うなりして、カバーしていくことが重要になります。
 

マネジメントのポイント

 ピープルマネジメントにおいては、短期的な成果だけを求めるのではなく、部下の成長やチームワークを高める動きが重要になります。以下ではそのポイントについて説明しましょう。

 
 部下の成長を考える際には、まず部下と成長イメージをすり合わせることがおすすめです。本人の意向と会社からの期待をすり合わせていき、成長ゴールを合意することが重要です。その成長ゴールに向けて、今の現状はどのような状態で、ゴールと比べた時にどれだけギャップがあるかの認識合わせが次に行うべきことになります。そして、その成長ゴールとギャップを踏まえて、現場の能力よりも少し背伸びした仕事を任せていきます。
 
 仕事を任せる際には、お客様や社会に対してその仕事が持つ意義や意味と共に、成長ゴールに向けてその仕事の経験がどういう意味を持ち、どういう能力を磨くことになるかをすり合わせることができると、本人もよりその仕事に意義や意味を感じて、前向きに仕事に取り組めるでしょう。
 
 また、個人の成長のみならず、メンバー同士でサポートしあったり、関わりあえるチームをどうやって構築していくのか、チームビジョンを持つことも重要です。メンバー同士がよりお互いのことを知り合えたり、業務上のコミュニケーションのみならず、その人の人間性や、強み・弱み、キャラクターを知り合うことができて、関係性を良くするような仕掛けを考えていくチームビルディングも、マネジャーとして意識すべき領域になります。

 
 もしチームビルディングを行うのが苦手なマネジャーであったとしても、チームメンバーの中で面倒見が良かったり、人と人とをつなぐことが得意なメンバーにチームビルディングの役割を担ってもらうようにして、チームワークを意識的に高めていくことが、長期的にみると実は大事だったりします。それが、チームの長期的な成功につながります。
 
 特にリモートワークという環境下においては、オフィスに出社していた時に行っていたような、メンバーのモチベーション状況を見て感覚的に行うピープルマネジメントはできなくなりました。社内SNSや、オンライン朝会、1 on 1コーチング、パルスサーベイ(簡易的な質問を繰り返し行う従業員満足度調査の1つ)などを通して、マネジャーが能動的にピープルマネジメントをしていかなければ、メンバーが孤立してしまったりと、チームワークは悪くなっていくでしょう。

 
 改めて、自社のマネジャーがきちんとパフォーマンスマネジメントとピープルマネジメントを行っているか、それらがうまく機能しているかを確認してみることをおすすめします。そして、うまく機能していない場合は、改めて今のマネジャーにその期待を伝えてみるところから始めてみてはいかがでしょうか?
 


森田 英一(もりた えいいち)
beyond global グループ President & CEO

 
大阪大学大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュアにて人・組織のコンサルティングに従事。その後シェイク社、beyond global社を創業。日系企業のグローバル化支援事業を手掛ける。社員の主体性やリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発ファシリテーションに定評がある。日本全国6万人の人事キーパーソンが選ぶ「HRアワード2013」(主催:日本の人事部 後援:厚生労働省)の教育・研修部門で最優秀賞受賞。主な著作「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「会社を変える組織開発」(PHP新書)など。日経スペシャル「ガイアの夜明け」「とくダネ!」などメディア出演多数。シンガポール在住。シンガポール在住。
人と組織の可能性を拓く beyond global グループ(シンガポール・タイ・日本)
グローバルリーダーシップ研究所
Email: info@beyond-g.com

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