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亜州ウォッチ!

2020年4月6日

新型コロナウイルスで被害甚大のタイ経済、20年成長率は2%割れの恐れも

大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。

 タイ経済が「泣きっ面に蜂」の様相を呈してきた。米中貿易摩擦などの影響で昨年の景気が大きく鈍化していたところに、今年は新型コロナウイルスの流行という新たな逆風が吹き始めたのだ。GDPの顕著な減速を報じた以下のニュースを転載する。
 

昨年の経済成長率2.4%に減速、今年の予測引き下げ

 タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)が2月17日発表した2019年の実質国内総生産(GDP)成長率は、前年比で2.4%の伸びにとどまった。前年の4.2%から大きく鈍化し、クーデターがあった14年以来の低水準。米中貿易摩擦やバーツ高などで輸出が落ち込み、国内の消費や投資も減速した。20年は新型コロナウイルスの流行で観光業の不振が懸念され、GDP成長率はさらに低下する見通しだ。
 
 同委員会は20年通期の成長率予測を下方修正。観光業への影響を考慮し、3ヵ月前の2.7~3.7%から1.5~2.5%に引き下げた。ほかに輸出額の伸び率を1.4%、個人消費を3.5%、投資を3.6%にそれぞれ下方修正した。(亜州ビジネスASEAN:2月17日付ニュース)
 

 

新型コロナによる経済へのマイナス影響、アセアン全体に広がる状態

 新型コロナウイルスの感染拡大はアセアン経済全体の脅威だが、特にタイとカンボジアにもたらす影響は深刻。観光業のGDP貢献度が高いうえ(カンボジアが3割超とアセアン域内でトップ。次いでタイとフィリピンが2割超と続く)、外国人観光客に占める中国人の割合も高いためだ(カンボジアとベトナムが3割で域内トップ。これにタイが2割と続く)。
 
 本稿執筆中の3月上旬時点で、中国国内の感染動向について「震源地の湖北省を除けば、感染の拡大はピークを過ぎた」と報じるメディアもあるが、楽観論に傾くのは時期尚早と思われる。少なくとも、中国人の旅行マインドは回復していない。
 

 
 タイの観光業はこれまで、ほぼ右肩上がりの成長を続けていたのだが、中国人観光客の減少によって今後の落ち込みが避けられない状況だ。新型コロナウイルスがいつ収束するのか見通しがはっきりとしない現状においてもちろん、タイ経済全体の足を引っ張ることも間違いない。

 

 

景気対策に期待だが…

 こうしたなか、タイでは景気テコ入れの必要に迫られる状態だ。すでに、金融政策面では動きがみられる。タイ中央銀行は2月5日の金融政策委員会(MPC)会合で、政策金利(翌日物レポ金利)を0.25ポイント下げ、過去最低の1.00%とする決定を下した。この利下げは2会合ぶりで、過去5会合で3度目。
 
 ただ、不良債権の増加が深刻化するなかで利下げを乱発するわけにもいかず、金融政策に手詰まり感が出始めていることも否めない。大規模な財政出動や規制緩和など、思い切った景気回復に向けた積極的なテコ入れ策の導入が待たれるところだ。

(亜州IRアセアン編集部)

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