2020年3月12日
ベトナム株式市場:年間上昇率ASEAN首位に、ファンダメンタルズが良好
大きく変化するアジア。人口増加の著しいこの地域が近い将来、巨大市場となり世界経済をけん引する日が来る――。その地殻変動を探るべく、旬のニュースとそれを裏付けるデータで、経済成長著しいASEAN諸国の「今」を読み解いていきます。
2019年ベトナム株式市場の実績
昨年(2019年)のベトナム株式市場は、アセアン域内で最も良いパフォーマンスを示した。主要指標の VN 指数は1年間で7.7%上昇し、フィリピン(フィリピン総合指数:4.7%上昇)やインドネシア(ジャカルタ総合指数:1.7%上昇)、タイ(SET 指数:1.0%上昇)、マレーシア(クアラルンプール総合指数:6.0%下落)を大きく引き離している。
NY市場が大きく上昇するなか(ダウ平均の年間上昇率は22.3%)、世界の投資マネーが米国に大量流入した反動で、アセアンなど新興国市場のパフォーマンスは相対的に目立たなかったが、ベトナム市場が域内で突出していた点は注目に値する。株価の上昇は、そのままベトナム経済の好調さを裏付けるためだ。最も分かりやすいデータとして、アセアン各国の19年GDP成長率を見てみよう。ベトナムの同成長率は、株価上昇率に近い7%を達成(08年以降で2番目の高水準)。これにフィリピンの5.8%、インドネシアの5.0%、マレーシアの4.6%、タイの2.7%と続いた。各国の株価がほぼ、経済に連動していることが分かる。
なぜベトナム経済の成長が顕著だったのか?
19年に関しては、やはり米中摩擦による「漁夫の利」が大きかった。それを象徴する動きとして、中国からベトナムへの資金移動をまとめたニュースを紹介する。
中国からの新規FDI急増、11カ月で前年比9割増
中国からの外国直接投資(FDI)が増えている。中国企業の2019年1~11月の新規FDI認可額は22億8,100万米ドル(約2,500億円)に上り、過去3年の通年実績を超えた。前年通期に比べると9割増えている。米中貿易摩擦を受けた工場移転の動きがあるほか、環境汚染に繋がる労働集約型産業を国外へ移す中国政府の方針も背景にある。VNエクスプレスが12月3日付で伝えた。
…(中略)…
アナリストらは、中国企業のベトナム投資が急増する背景として、米中摩擦を挙げている。対米輸出で関税メリットを享受するためで、ベトナム経済が高成長と低インフレで安定していることも背景にある。(「亜州ビジネス ASEAN」19年12月4日付ニュース)。
今後の見通し
米中の通商摩擦に関し、歩み寄りが見られないわけではないが(「第1段階の合意」など)、根本的な解決にはなお相当の時間を要するとの見方が有力だ。したがってベトナムへ資金がシフトする動きは当分続き、それがもたらす経済成長にあわせて株式市場も強含むことが予想される。
2000年にスタートしたばかりのベトナム株式市場は、まだ黎明期のマーケットと言ってよいが、それだけに今後の成長余地が大きい。もちろん、業界全体の長期的な発展も期待される。
(亜州 IR アセアン編集部)