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会計・税務相談

2020年3月2日

Q.国際投資家制度の改正について

このコーナーでは、読者の皆様のお悩み・ご相談を、会計・税制、 法律のプロフェッショナルが無料でお答えします。

国際投資家制度(GIP)が改正されるそうですが、どのように変更されるのでしょうか。

 GIPは、シンガポールで一定以上の規模の事業や投資を計画する外国人の起業家や経営者に対して永住権を付与する制度で、経済開発庁(EDB)が管掌しています。2020年3月1日より制度の内容が変更され、申請対象の範囲が拡大されると同時に、現行制度における年商要件が引き上げられることになります。
 

申請対象はどのように拡大されるのでしょうか。

 現行制度は、GIPの指定事業を行う年商5,000万Sドル(約40億円)以上の会社を3年以上経営する「実績がある経営者」を対象にしています。申請者は、当該会社が非公開会社の場合は株式の30%以上を保有し、公開会社の場合は個人大株主の一人でなければなりません。
 
 2020年3月1日より、この申請枠は年商を2億Sドル(約160億円)以上に引き上げて継続されます。年商の要件は、申請直前の単年度および申請直前の3年間の平均の両方について満たさなければなりません。
 
 更に、改正により新たに三つの申請対象が追加されます。
  
 一つは「次世代の経営者」を対象にしたもので、申請者がGIPの指定事業を行う年商5億Sドル(約400億円)以上の会社の役員であり、近親者が当該会社の30%以上の株主または最大株主である場合に申請することができます。
  
 もう一つは「急成長を遂げる会社の創業者」を対象にしたもので、申請者がGIPの指定事業を行う会社の創業者で、かつ個人大株主の一人として時価総額5億Sドル以上の株式を保有し、当該会社が優良ベンチャーキャピタルまたは未公開株式投資会社から出資を受けている場合に申請することができます。
  
 最後は「ファミリーオフィス」を対象にしたもので、申請者に5年以上の起業・投資・経営経験があり、かつ2億Sドル以上の投資可能な資産を有する場合に申請することができます。
 

上記の申請要件に加え、シンガポールへの投資が必須とされるそうですが、投資の要件はどのように定められているのでしょうか。

 投資金額は現行と同様に250万Sドル(約2億円)以上とされており、下記A、B、Cの何れかの投資方法を選択することができます。
 このうちCは新しく設けられたもので、「ファミリーオフィス」の場合はCによる投資に限定されます。投資は全て、シンガポールで登記された銀行の申請者個人名義の口座から送金されなければなりません。
 
 A.シンガポールでGIPの指定事業を行う会社の新設または増資
 B.シンガポールの会社に投資するGIP認可ファンドへの投資
 C.シンガポールを拠点とし2億Sドル以上の投資資産を保有するファミリーオフィスの新設または増資
 

申請手続きは、どのように進められるのでしょうか。

 申請者は、まず所定の申請書および資料をEDBに提出します。申請手数料は7,000Sドル(約56万円)で、審査の可否に関わらず返金不可とされています。
 
 書類審査および面接により申請要件を満たすと判断された場合、6ヵ月間の仮の滞在許可が下ります。申請者は、その6ヵ月間に投資を実行し、それを証明する文書を提出します。投資の要件を満たしていることが証明されると最終の滞在許可が下り、それから12ヵ月以内に永住権の手続きを行うことになります。永住権は、5年間の有効期限で発行されます。
 
 

永住権の更新は、どのような基準に基づいて為されるのでしょうか。

 永住権の更新は、5年目において以下の要件が満たされているか否かによって判断されます。
 
 (1)選択したA、B、Cの投資要件を継続的に満たしていること
 (2)申請時にEDBに提出した計画に基づきシンガポールで新設または増資した事業に関し、GIPの認可時と比較して10名以上の従業員(うち5名はシンガポール国籍、更にCに関しては3名以上の親族以外の法務・税務・投資の専門家)を増員していること、かつ当該事業の総経費が年間200万Sドル(約1億6,000万円)以上増えていること
 (3)GIPにより永住権を取得した本人または帯同家族全員が過半の日数についてシンガポールに滞在していること
 
 (1)、(2)、(3)の全てを満たす場合は5年間、(1)を満たした上で(2)か(3)の何れかを満たす場合は3年間の更新が認められます。
 
 

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Tricor Singapore Pte Ltd 斯波澄子

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