シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPアイディア発想に必要な【異分野ミミクリー思考】 その2

異分野こそアイディアの宝庫!

2020年1月7日

アイディア発想に必要な【異分野ミミクリー思考】 その2

バイオミミクリーとは?

 今回の異分野ミミクリーのテーマは、自然界をまねる「バイオミミクリー」です。自然界から謙虚に学ぶということから、ネイチャーテクノロジーとも呼ばれています。
 
 地球は約 46 億年の歴史があるので、自然界の叡智には、基本的に「ムリ・ムダ・ムラ」がありません。創造・維持・破壊という、進化発展を繰り返した自然界は、人間がまねる上で最高のお手本の宝庫です。
 

森は海の恋人

 数十億年の永い歴史に育まれた地球の自然は、私たち人間にとっての偉大な「先生・先達」です。その実例をご紹介します。
 
 北海道の代表的産物である日高昆布は、一時全く育たなくなり衰退したことがありました。その原因は、昆布の漁場である海ではなく、近くにある襟裳岬が森林の伐採により砂漠化していたからだったのです。強風に煽られた大量の砂が海に運ばれて、海底にヘドロ化し、海が汚れ、昆布は全く育たなくなってしまいました。
 
 そこで日高昆布の漁師である飯田常男さんが、一念発起して襟裳岬に植林を行い、森林を復活させました。一見、関係なさそうな森と海ですが、実は、海を蘇らせるには、森の復活こそが自然界での必須条件だったのです。自然の営みをまねることで日高昆布を育む海の再生に繋げた、バイオミミクリーの好例です。
 

マジックテープの誕生

 工業製品の中にもバイオミミクリーの事例はたくさんあります。おそらく一番身近なバイオミミクリーの例は、皆さんもよくご存じの「マジックテープ」。これは、くっつき虫とも呼ばれるごぼうの実が、衣服や犬にくっつくことにヒントを得て誕生しました。
 
 ごぼうの実のトゲは先端がフックのように曲がっています。その形をまねるところから生まれた発明なのです。この発明は「面ファスナー」として、1955 年にスイスで特許認定されました。
 
 ちなみに「マジックテープ」という名称は、実は 1960 年に日本で生まれました。これは、人工皮革「クラリーノ」でも有名な化学メーカー、クラレの登録商標です。前回の東京オリンピックが開催された 1964 年に東海道新幹線が開通しましたが、そのヘッドレストのカバーの留め具としてクラレの「マジックテープ」が採用され、一躍有名になりました。意外に知られていない、面白いエピソードですよね。
 

掃除機が猫をまねる?

 では次に、電気製品に応用されている面白い事例をご紹介しましょう。
 
 猫が毛づくろいをする際に、大活躍しているのが「舌」です。猫の舌の表面には「糸状乳頭」というザラザラした突起があり、ブラシのように毛を梳いてくれます。
 
 この猫の舌をミミクリーした電気製品が、シャープが発明したサイクロン掃除機。吸い込んだゴミの量を、何と15分の1まで圧縮してしまう優れものです!
 
 シャープは、掃除機の中にあるゴミの圧縮ブレードに、猫の舌のザラザラ突起を応用したトゲ状の構造を追加しました。トゲがブラシの役割をして、ゴミに含まれる空気が抜けて、ゴミの体積が減少するという仕組みです。掃除機に溜まるゴミを捨てる回数が減るのは最高に楽で、主婦としても大変助かります。
 
 自然界の叡智は、どんどんミミクリーして応用していきたいですね。次回も、お楽しみに!
 


石川 耀弓 (いしかわ きくよ)
【元ソニーの女性エジソン】の異名を持つ、デジカメの電子シャッターの発明者!
全国発明表彰、特許特級表彰、アントレプレナー賞を受賞。現在は、中小企業のキラリと光る技術を発掘して世界に発信する【フィールウェア・プロジェクト】を主宰。脳の使い方をナビゲートするブレイン・アナリストとしても活躍。ペンネーム下川眞季で『”かわいい”のわざが世界を変える!~フィールウェアという発想~』(彩流社)を上梓。
 
株式会社 ダヴィンチ・ブレインズ 代表取締役社長
(NPO)大田ビジネス創造協議会 理事、技術士(経営工学)
会社URL http://www.davinci-brains.co.jp/
フィールウェア・プロジェクト http://feelware.jp/
著作本書評 http://eliesbook.co.jp/review/ Vol.4932

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPアイディア発想に必要な【異分野ミミクリー思考】 その2