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異分野こそアイディアの宝庫!

2019年11月25日

アイディア発想に必要な【異分野ミミクリー思考】 その1

似ているものを特定する能力とは

 前回、冒頭で紹介したアイディア発想に必要な思考ルールの一つ『異分野ミミクリー思考』。ミミクリーとは『まねる』という意味でしたね。そもそも、学ぶとは、まねて学ぶ、という意味の “まねぶ” が語源とも言われています。
 
 異分野からまねるために必要なこと。それは『似ているものを特定する能力』です。一見異なるように見えて、実は似ている。2つの異なる世界を結びつける力!これは、人間の知能の基本的な機能だったのです。
 
 ここで、ちょっとしたクイズです。ビール工場の製造ラインのベルトコンベアーから生まれた全く異分野のビジネスモデルは何でしょうか?
 
 そうです。言わずと知れた「回転ずし」です。今では、お寿司以外にもスイーツなどいろいろな食べ物がベルトコンベアーに乗せられて回るように進化しています。このように、なるべく離れた、遠い世界からアイディアを借りて来る。あるいは、より進んだ世界から借りて来る。これが異分野ミミクリーのコツです!
 

生産ラインにお客様を乗せる?
~サービス業が製造業の手法を真似た事例~

 次に、全く異業種の製造ラインのルールを真似て、クリニックが格段に効率をアップした成功事例をご紹介しましょう。
 
 初診で病院に行くと、長時間待たされることが多くはありませんか?それは、ファーストイン・ファーストアウトの考え方で、ただ来た順番に案内しているからです。ここで発想を変えて、患者さんが来院してから1時間以内でお帰り頂けるようにするとしたら、どうなるでしょうか?
 
 患者さんの中にはただ結果だけ聞きに来た人もいれば、お薬だけもらう人もいますし、注射だけ打ちに来た人もいます。色々な人がいるのですから、来た順番とは関係無く、さっさと自分の用件だけ終わらせて帰りたいわけです。
 
 このクリニックでは、労働生産性をアップするために「作業の標準化」や「業務量の平準化」という、生産ラインで当たり前に行われている手法を取り入れました。仕事は、やはり並行にこなしていった方が効率がいいのです。
 
 「業務量の平準化」というのは、ある人に業務が集中しないように、みんなに仕事を振り分けることで、仕事の流れが滞るのを防ぎます。あるところに非常に負荷が掛かってしまうとそこで流れが止まってしまう、そうした“ボトルネック”を解消できるようになるからです。製造ラインではその“ボトルネック”を見つけて平準化していくことで、生産効率をアップさせるのが常識です。そのルールをクリニックに導入することによって、いらした患者さんに1時間以内に帰って頂くことができるようになりました。
 
 「生産ラインに患者さんを乗せる」というと、人をモノ扱いしているように聞こえるかもしれません。しかし不思議なことに非人間的な扱いになるどころか、患者さんは時間が短縮できて大喜び、従業員も残業が減って今までの無駄な時間が少なくなりました。
 
 他の業界の常識は自分の業界の非常識。逆もまた真なりで、自分の常識は他人の非常識!常識と非常識がぶつかり合うところに、化学反応が起こり、イノベーションが生まれます。
 
 答えは自分の業界内にだけあるのではありません。もっと他の業界の中に目を向けてみませんか?
 


石川 耀弓 (いしかわ きくよ)
【元ソニーの女性エジソン】の異名を持つ、デジカメの電子シャッターの発明者!
全国発明表彰、特許特級表彰、アントレプレナー賞を受賞。現在は、中小企業のキラリと光る技術を発掘して世界に発信する【フィールウェア・プロジェクト】を主宰。脳の使い方をナビゲートするブレイン・アナリストとしても活躍。ペンネーム下川眞季で『”かわいい”のわざが世界を変える!~フィールウェアという発想~』(彩流社)を上梓。
 
株式会社 ダヴィンチ・ブレインズ 代表取締役社長
(NPO)大田ビジネス創造協議会 理事、技術士(経営工学)
会社URL http://www.davinci-brains.co.jp/
フィールウェア・プロジェクト http://feelware.jp/
著作本書評 http://eliesbook.co.jp/review/ Vol.4932

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.352(2019年12月1日発行)」に掲載されたものです。

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