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2019年6月25日

シンガポールの新名所 JEWEL Changi Airport(ジュエル・チャンギ空港)

映画アバターの自然とショッピングが一つ屋根の下に!

 観光でもビジネスでも、初めて訪れる空港の探検は楽しいもの。単なる旅の通過点としての空港ではなく、訪れる人をどのようにもてなすのか、国の玄関口としての意気込みが現れる。2019年4月17日、建設期間4年と約17億Sドル(約1,400億円)をかけたドーム型複合施設『JEWEL Changi Airport(ジュエル・チャンギ空港)』がオープンした。英航空サービス格付け会Skytraxによる世界の空港ランキングで7年連続第1位に選ばれているシンガポールのチャンギ国際空港の新たな目玉として、さらに世界中にその卓越した存在感を知らしめることとなった。今回はジュエルの秀逸な建築とアトラクションの魅力を中心にお伝えしたい。
 


 

 チャンギ国際空港第1ターミナルに直結したジュエルは、元々第1ターミナル駐車場だったスペースを取り壊して建設された。第1ターミナル1Fの到着口玄関を出てすぐの歩道を渡ればジュエルのメインエントランスだ。周囲にはターミナルとこのジュエルしか建造物がないので迷うこともないだろう。また、第2、第3ターミナルはリンクブリッジを使って徒歩5〜10分の距離。第4ターミナルからは、第2・第4ターミナル間を走る無料のシャトルバスを利用して、第2ターミナルから徒歩となる。

 

 外観は自然光を反射する丸みを帯びた宝石の形で、約9,000個のガラスと約18,000の鋼桁、6,000個の鋼桁ノードが使用されている。ドームは13万5,700平方米の総床面積、5階建である。ゆるやかな曲線を描く外観が優美で、空港は単なる旅の通過点だという観念が、良い意味で揺らぐ。

 

 「楕円形ドームだと普通すぎるから、よりエキサイティングにしたい」と遊び心を込めて、中が空いたドーナツ型に設計したのが『Safdie Architects(サフディー・アーキテクツ)』創立者のMoshe Safdie(モシェ・サフディー)氏。マリーナ・ベイ・サンズも手がけたアワード受賞歴のある建築家だ。『The Straits Times(ザ・ストレーツ・タイムス)』の取材に対して「恐竜、水族館のようなテーマパーク風アトラクションという案もあったが、一時的な人気で終わったり、特定の年齢グループにアピールするものでしかないと最終的にアイデアを一掃した。映画アバターにインスピレーションを受け、どの収入層、年齢でも楽しめるパラダイス・神話的なガーデンをイメージした静けさと安らぎの空間にしたいと考えた」とデザインコンセプトを語っている。

 

世界最大の人工滝ー『アバター』の世界観 探求心をくすぐるアトラクションの数々

 
 一歩ジュエルの中に足を踏み入れると、そこには慌ただしい空港の雰囲気を忘れてしまうような、自然と無機質な素材が見事に調和したエレガントな空間が広がっていた。天井を見上げれば、宝石を思わせる無数のクリスタルを使った白いオブジェが垂れ下がる。その奥に、たくさんの植物に囲まれた滝が木々の間からチラリと姿をのぞかせている。秘境の奥にやっと滝を見つけて、あと少しでたどり着けそうという、訪れた人の好奇心をそそる演出がされていた。
 

 ドームの中心を貫くように設置された滝は『 HSBC Rain Vortex(エイチエスビーシー・レイン・ヴォルテックス)』。40メートルの長さを誇る、世界最長の室内滝だ。2,000種類以上の植物に取り囲まれ、その周囲を散歩することができる。これは資生堂による『Shiseido Forest Valley(資生堂フォレストバレー)』という名のアトラクション。左右に様々な植物を見ながら歩いて滝に近づくと、澄んだ空気が心地よい。周囲をぐるっと植物に囲まれた滝はまさに『アバター』の世界観だ。滝の周囲には座れる場所がたくさんあり、コミュニティスペースのように人が集う。3万8,000リットルの水がこの滝に使用されているといい、下を見ると、滝壺に吸い込まれる水量に圧倒されるが、この天井部分に降り注ぐ雨水も再利用されているらしい。自然界と調和する仕組みも“神話的なガーデン”らしいコンセプトと、建築家サフディー氏は語っている。
 
 興味深いのがこれほどの水量が流れているのにも関わらず、滝の近くでも周囲の人と会話ができるほど音が大変静かであること。これは2階建て分(10メートル)のアクリル製漏斗が地下に伸びており、そこで水しぶきを吸収する仕組みになっているためだ。なお、夜間(午後7時半から午前12:30間、1時間に1回)は光とレーザーのショーが催されるため、より神秘的な雰囲気を楽しめるはずた。滝を見ながら、最上階である5階まで階段を上ると、見る角度や位置により景観が変化するのが面白い。途中で観光客かと思って声をかけた方々に話を聞くと、地元の人々。「友人同士でこの新スポットを見に来た。シンガポールに新しい名所ができて嬉しい」と話していた。
 

 その同じ階に6月10日付けでオープンした「キャノピー・パーク」は子供だけでなく、童心を忘れない大人も楽しめるアミューズメントパーク。巨大滑り台「ディスカバリー・スライド」や空中に設置された「スカイネッツ・バウンシング」、また緑の木々の間を進む巨大迷路「ヘッジメイズ」や鏡の迷路「ミラーメイズ」も大人気だ。

 

 

 

 また4階にできた「チャンギ・エクスペリエンス・スタジオ」は、最新テクノロジーを駆使した空港ファンにはたまらない、体験型アトラクション・アミューズメント施設。空港の過去と未来をワープしたかのように学べるバーチャル体験型ゲームや、ポルシェとボーイングのスピードを競う滑走路レースゲーム、空港トロリーを集めるゲームなど、子供と一緒に楽しめる。また空港の様々な機能をシミュレーションするゲームなど、最新ハイテク機能満載のアトラクションで盛りだくさんだ。

 

乗継客を楽しませる大型商業施設

 自然を堪能した後は、商業施設のエリアへ。エリアには280以上もの店舗が入っており、全般的にはシンガポール島内のショッピングモールでよく見かけるブランドが多い印象。また、シンガポール初進出のNY発のハンバーガー店『Shake Shack(シェイク・シャック)』は入店できるまで数時間待ち。シンガポール初のポケモン専門常設店として出店する『Pokemon Centre(ポケモン・センター)』も人気だ。JR東日本による飲食・物販複合型店舗『JW360°(ジェイダブリュー・スリーシックスティ)』は、日本の各地域が育んできた魅力を、「食」を中心に、360°あらゆる視点からセレクトした、自然体の「日本のスタイル」をグローバルに発信する拠点。同社が新しく立ち上げた複合業態で今回の出店が第1号店だとか。ローカルメディアやブロガーが訪れた様子を盛んに取り上げている。

 

 商業エリア内には、子供の遊び場はもちろん、シンガポールでは珍しいウォシュレット完備のトイレも設置され、サフディー氏の言葉通り様々な世代やニーズに対応されている。空港に早めに到着してショッピングやアトラクションを楽しむのもよし、ただ散策するもよし。旅行者だけでなく、シンガポール在住者が訪れても驚きと発見であふれる、新商業施設ジュエル。その名の通り、世界の人とモノを魅了する輝きを放っている。

(取材・写真 舞スーリ)

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