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スペシャルインタビュー

2016年11月7日

Cinema Festival Director/Producer 中西 舞さん 女性監督作品のみのホラー映画祭を主催、ホラー映画の奥深さを、より多くの人に伝えたい

日本で2013年から開催されている、国内外の女性監督によるホラー映画を上映するイベント「東京スクリーム・クイーン映画祭」が、今年初めてシンガポールのゴールデンマイルタワーにある名画座、ザ・プロジェクターで10月28日から30日まで開催された。映画祭の企画から運営、作品のセレクト、翻訳、字幕制作までを一人で手がけたのが中西舞さんだ。映画祭開催のきっかけやシンガポールを代表する映像ディレクター、エリック・クー監督との作品づくり、映画業界の今後の展望などについて伺った。

 

―今年初めてシンガポールで開催された「東京スクリーム・クイーン映画祭」とはどんなイベントなのでしょうか。

313web_signboard_img_4849映画祭そのものは2013年に日本でスタートし今年で4回目になります。以前から女性監督の作品や、ジャンル映画(ホラー、サスペンス、ダークファンタジー、ホラーコメディ)に対して先入観なく純粋に楽しんでもらえる観客は、日本より海外のほうが多いと感じていました。シンガポールはアジアの中心国の一つですし、日本の映倫のようなセンサーシップ(検閲)はありますが、他のアジア圏に比べるとより多くの国々の映画が観られる環境にある。いろいろな作品に触れており観客の目がとても肥えていると思います。私自身、父の仕事の関係で19歳まで過ごしたシンガポールでこの映画祭を開催できたことはとてもうれしいですね。
今回上映したのは長編と短編20作品なのですが、たとえばオープニングで上映した『ラブ・ウィッチ』(米国、2016年)は、米国のアナ・ビラー監督自身が衣装も美術もすべて手がけ、1960年代に撮られたような雰囲気があり、全編が彼女の美的センスで溢れています。王道のホラーというより、女性の深層心理が垣間見える長編ブラックコメディで、若い方から往年のホラーファンの方にまでとても好評でした。このほか、各国から自分で選んだ短編をラインナップしており、シンガポール初上映のものばかりです。この映画祭でしか観られない作品を紹介できたと思っています。

 

―以前バンクーバーで開催された、女性ホラー監督による短編作品を集めた「Viscera映画祭」にインスパイアされてこの映画祭を企画したと聞きました。今回のイベントを企画したきっかけについて詳しく教えてください。

カナダ人の友人が声をかけてくれて、Viscera映画祭(現在は中止)に参加したことが直接のきっかけです。「女性監督が作ったホラー短編がこんなにあるんだ」「実験的な作品だけどこのクオリティなら長編も作れるはず」といった発見がたくさんありました。ただ上映されたのはすべて北米や北欧の作品だったので、アジアの女性監督の作品も紹介するイベントを立ち上げたいと思いました。そこで「東京スクリーム・クイーン映画祭」でも、日本を始めアジア全体の女性ホラー監督の開拓に力を入れています。
私はもともと映画の配給や買い付けの仕事に携わってきたのですが、映画界で活躍する女性はまだまだ少なく、ホラーを中心としたジャンル映画で活躍する女性監督はさらにマイノリティな存在なのが実情です。具体的には、宣伝やマーケティングの分野では多くの女性が活躍していますが、製作現場となると極端に少ないのです。朝から深夜まで撮影が続くため家に帰る時間もないケースが多く、体力の問題や出産後まで続けられない人が出てきてしまう。また海外には政府が女性監督に助成金を出す国がありますが、日本ではそういうシステムがないためアルバイトをしながら作品作りをしている人もいて、資金繰りも大きな問題です。今年の「東京スクリーム・クイーン映画祭」で長編映画を増やしたのも、短編から苦労して長編映画へステップアップした女性監督を少しでも後押ししたいという気持ちからでした。

 

―ホラー映画に興味を持ち始めたきっかけは何だったのでしょうか。

ホラー映画に関して、殺人鬼や血みどろのステレオタイプなイメージだけで毛嫌いしている人もいるかもしれませんが、実は人間の業や罪深さを表現している作品がたくさんあります。私自身、小学2年生の時にアルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』を初めて見た時、衝撃を受けました。幽霊やモンスターが出てくるのかと思ったら、あの映画で描かれていたのは人間の狂気や社会の闇だった。「映画ってこんなにもたくさんのことを表現できるんだ」と驚きました。すぐに同級生を数人招いて自宅で上映会を開いたんですが、作品を観てもらい終わった後はみんなで感想を言い合う、その一連のプロセスがとても面白かった。ホラー映画の奥深さを少しでも多くの人に知ってもらいたい――これが私の中の原風景ですね。

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