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来星記念インタビュー

2016年11月7日

Cinema Festival Director/Producer 中西 舞さん 女性監督作品のみのホラー映画祭を主催、ホラー映画の奥深さを、より多くの人に伝えたい

―シンガポールを代表する映像クリエイター、エリック・クー監督の製作現場に参加するなど旧知の仲と伺っています。中西さんから見てエリック氏はどんなアーティストなのでしょうか。

初めてお会いしたのは、韓国の富川(プチョン)・国際ファンタスティック映画祭というジャンルものに特化した映画祭でした。自分の企画が選ばれて参加したのですが、そこにエリックもいて、こちらから「シンガポールで同じ中学、高校だったんですよ」と話しかけたのが始まりです。すぐに打ちとけて連絡を取り合うようになりました。
去年初めて彼の製作現場に参加したのですが、クリエイターとしてのエリックから本当に多くの刺激を受けています。彼はとにかく怖いもの知らずの自由人で、「シンガポールで上映できなくても海外で観てくれる人がいればいい」とセンサーシップをまったく気にしていないんです(笑)。お客さんを楽しませる商業作品の中で、独自の世界観を200%以上表現できる稀有なアーティストの一人だと思います。

 

―エリック監督の「7 Letters(セブンレターズ)」という短編映画の製作に参加したそうですね。現場の雰囲気はいかがでしたか。

その前に長編ドラマでご一緒して、映画では昨年初めて「7 Letters」の助監督を務めました。これはシンガポール建国50周年を記念して制作された短編オムニバス作品で、エリックを含めたシンガポールを代表する7人の監督による、民族、文化などそれぞれのバックグラウンドが違うシンガポーリアンの物語を描いたショートムービーです。
現場でまず驚いたのが、シンガポール人スタッフの優秀さでした。エリックは座っているだけなのに、彼が何を求めているかみんな事前に察して動くんです。スムーズだけど緊張感があり、若くて有能なスタッフのエネルギーに溢れる現場でしたね。正直、その中でエリックの手足となる助監督を務めるのはかなりのプレッシャーでした。私の持っている考え、知識、先入観はすべて捨てて、「何でも学ぶので教えてください」というスタンスで現場に入りました。日本人は私一人だけで、日本人だからだめだと思われたくないという重圧もありましたね。構想と準備に半年以上、撮影そのものは実質3日間でしたが、撮影が終わるのが明け方で、家に着替えに帰り、朝7時からまた撮影が始まるような毎日でした。

 

―今後、映画業界でどんな役割を担っていきたいとお考えでしょうか。抱負と展望を教えてください。

313web_blackboard_img_4857東京スクリーム・クイーン映画祭のように、一人ですべてを手がけるのは大変なことです。私が倒れたらその瞬間に映画祭そのものが頓挫してしまうし、正直お金が儲かるわけでもありません。ただ、私はホラー映画をアートの1ジャンルとして愛していますし、今までこうした作品を作っている女性監督と接してたくさんの勇気をもらってきました。実は今、この映画祭でお会いした方と一緒に映画を作ろうという話があります。まだ女性監督と一緒に映画作りをしたことがないので、完成したら映画祭を通して海外へ発信していきたいと思っています。
私自身、プロデューサーとして女性監督の後押しや応援を続けることで彼女たちが活躍できるようになったら、映画業界全体がもっと活性化するはずです。観客の皆さんにもホラー映画の新しい楽しみ方を提案していけたらいいですね。

 

 

 

313web_msnakanishi_img_4838中西 舞(なかにし まい)
東京生まれ、シンガポール育ち。国際基督教大学在籍中にカリフォルニア大学アーバイン校映画学科に交換留学し、現地の映画会社でインターンを経験。卒業後、外資系配給会社や映画専門局を経て2011年にカナダに渡り、映画プロデュースを学ぶ。現地で参加した映画の企画コンペで優勝し、カナダ人スタッフを率いて製作した短編作品はゆうばり国際ファンタスティック映画祭を始め国内外の映画祭で上映された。映画祭を運営する傍ら、映像コンテンツの企画・プロデュースを始め映画祭・上映会のプログラミングにも携わる。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.313(2016年11月7日発行)」に掲載されたものです。(取材・写真:宮崎 千裕)

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