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星・見聞録

2016年10月17日

アジアで活発化する高速鉄道計画の現状

このほか、ボンバルディアはシーメンスと共同で、次世代車両「ICE4」の開発を進めており、日本勢の強力なライバルになる可能性もありそうだ。この車両の速度は時速250キロメートルほどで、軽量で消費電力が低いのが特徴という。さらに宮澤氏はこう指摘する。「アジアのプロジェクト実施国でも、鉄道の速さは250キロメートルくらいで十分で、300キロメートルの新幹線はオーバースペックという考え方もあります」。

 

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また中国企業が海外に積極展開する背景にあるのが、中国政府の意向だという。中国政府は海外での受注活動を支援しており、インドネシアの高速鉄道プロジェクトでは、事業費の全額を融資し、インドネシア政府の債務保証を求めないという破格の条件を提示し、工事を受注した。「中国は、すでに国内で10年に渡って高速鉄道を走らせており、自国の技術の影響力を他国に示したい狙いがあります。日本の場合、海外プロジェクトの受注活動は民間企業に任せられており、日本と中国では政府の姿勢に大きな違いがあります。こうした中で、日本の民間企業が無理をしてまで海外の案件を受注しに行く必要があるのかは、考慮が必要でしょう」(宮澤氏)。海外プロジェクトのリスクとリターンについては、冷静な判断が求められるといえるだろう。

 

日本企業、受注に向けた課題は?

 

東北新幹線「はやぶさ」。シンガポールで今年7月に開催された新幹線シンポジウムでも運転台のシミュレーターが展示された。

東北新幹線「はやぶさ」。シンガポールで今年7月に開催された新幹線シンポジウムでも運転台のシミュレーターが展示された。

 

 

 

 

このほか、今後日本企業が海外で成約を伸ばしていくにはどういった取り組みが必要なのか。林氏は次のような見方を示す。「新幹線をアピールしていくにあたり、日本から車両などを輸出するだけでなく、地場のパートナーとジョイントベンチャーを組成し、現地で関連産業の育成が期待できるといったことも強調すべきでしょう」。
宮澤氏も、早い段階からプロジェクトに関わっていくことが重要と指摘する。「工事を始める以前の、都市計画や国家計画などの段階で積極的にプロジェクトに関わっていく必要があります。そうした計画に新幹線方式がいかに合致するかを示すことが必要です」。今後アジアで競争力を発揮していくには、ただ車両を輸出するだけではなく、現地の産業振興や雇用、都市開発などにも貢献できるような、より多面的なアプローチが必要といえそうだ。

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