2016年9月5日
シンガポールで知っておきたい ヒンドゥー教の世界
意外と勘違い?ヒンドゥー教を正しく理解しよう
ヒンドゥー教と聞くと、「インドの宗教」「多神教」「牛肉は食べない」などを連想する人が多いだろう。はたしてそのイメージは正しいのか、ここではヒンドゥー教の正しい認識をお伝えする。
〈その1〉
×神様の数が3億3,000万という多神教である
○「唯一至高の存在」が個々の神という形となって存在している
ヒンドゥー教徒は地域や集団などの所属によって、それぞれに合った神を崇拝していること、またヒンドゥー教の神として、創造神ブラフマー、繁栄神ヴィシュヌ、破壊神シヴァという三神一体の存在が知られていることから、つい多神教と思われがち。しかし根本には宇宙そのものが最高で唯一の存在であり、神はその中の構成要素でしかないという考えがある。そのため、ヒンドゥー教は時に単一神教、もしくは一神教と呼ばれることもある。
なお、ヒンドゥー教の寺院などを訪れると神の偶像が多数祀られているが、偶像は単に神をイメージしたものに過ぎず、神の偶像に語りかけ祈ることで、それを介して神に通じると考えているため、偶像崇拝であるという認識も正しくない。
〈その2〉
×ヒンドゥー教徒はベジタリアンである
○ほとんどの人が肉を食べる(ただし、牛肉以外)
すべての生命は存在する価値があるため不殺生はしないという信条のもと、ベジタリアンのヒンドゥー教徒は確かに存在するが、約70%の教徒はチキンやラム肉等を食べても良いという選択をとっている。しかしヒンドゥー教にとって牛は、ミルクという貴重な栄養源を供給してくれる存在であること、また神話にも登場する動物であるといった理由などから神聖なものとみなされており、一般的には牛肉は食べないとされている。豚肉も基本的には食べない人が多い。
〈その3〉
×社会問題ともいわれるカースト制度(階級社会)はヒンドゥー教の教えである
○現代に残る差別的なカースト制度は、長い歴史を通して社会に根付いてしまった制度
カースト制度は本来、人々を職業などで分類していた古代ヒンドゥー教の社会システムだったものが、時代を重ねてより厳格で差別的な社会的階級に変化していった。しかし現代のヒンドゥー教徒からは、階級の低い人は汚らわしいという風潮や、身分の異なる者同士の結婚は許されないなど、今に残る差別的な階級はヒンドゥー教として本来あるべき姿ではないとの声も上がっている。
〈その4〉
×女性は性差別を受けて屈従を強いられている
○女性は大切にされる存在である
女性は月経があり不浄であるなどと説くマヌ法典の存在、また身分違いの結婚を理由に女性が殺されるなど虐待のニュースが絶えないことから、女性は差別を受けているという印象が強い。しかし、ヒンドゥー教にはシヴァなど最高神の性力の象徴である女神シャクティ、芸術・学問の女神サラスヴァティー、美と幸運の女神ラクシュミーなどが一般的に崇拝されていることから、女性は常に大切にされるべきという考えが本来の姿である。