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シンガポール星層解明

2016年7月5日

パナマ文書公開で国際的に課税強化 シンガポールの日本人富裕層への影響は? 解説:AGSシンガポール 税理士有資格者 鈴木寛氏

OECDとシンガポール

最後に、近年のOECDの動向について触れたい。近年のグーグルやアップルなどの多国籍企業による租税回避スキームについて、OECDは「BEPS(税源浸食と利益移転」)」として問題視し、2015年末に情報開示やタックスヘイブン対策税制の強化などを含む報告書を公表した。またパナマ文書を受けて、パナマを含む複数国に対し、「国際間の金融口座情報の交換基準」への参加圧力をかけるなど、国際的な役割は大きい。

 

シンガポールはOECDの活動に参加しているのみで加盟はしていないが、その動向を重要視している。例えば、OECDが2009年に公表した租税協定の国際基準について、シンガポールは一定基準を満たしていないとされたため、その後1年間で各国との情報協定などを急速化させた。最近では、先に述べた金融口座情報の交換基準について、来年2017年からの施行を目指し整備を進めている。

 

国際的な情報開示と富裕層への課税強化が加速する中、パナマ文書の報道は、この流れをさらに肯定し加速化させるきっかけとなった。このような流れの中、シンガポール政府がすでに当地に移住した、または将来移住を考えている富裕層に対してどのような環境を作っていくのか、今後も注目を集めるところである。

 

※本文においては、各税制の詳細について簡略化していることにご留意下さい。

プロフィール

web_305_Profile_Suzuki鈴木寛(すずき かん)
AGSコンサルティング/シンガポール代表 

日本国税理士有資格者。日系会計事務所であるAGSコンサルティング東京本社にて、事業承継を含め中小企業から上場会社まで幅広いクライアントを担当。同時に国際事業部長として、アジアを中心としたクロスボーダー案件に関与。現在は、AGSシンガポールの代表として、日系企業の海外進出と日本へのインバウンド案件を取りまとめている。

 

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX vol.305(2016年07月04日発行)」に掲載されたものです。

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