2005年4月4日
Q.シンガポールにはパートナーシップというビジネスがありますが、株式会社とどのような点が違うのですか。
パートナーシップと株式会社の違い
パートナーシップとは、2人以上20人までの個人が共同で営利を目的とした活動を行う場合のビジネスの形態を言います。(例外、会計士・弁護士等専門家の場合20人以上も可)。日本にはパートナーシップという形態の法律上の組織は存在しません。シンガポールではイギリス法に由来するPartnership Act (Ch.391) があります。
パートナーシップと株式会社は端的に何が一番違うかというと、パートナーシップは法人ではないが株式会社は法人であるということです。法人とは自然人(人)に対する概念で、法が擬制する人格です。法人は法律上権利義務の主体となることができます。したがって、株式会社は取締役や株主個人とは別の権利主体として、会社自身の名義で不動産を登記したり、自ら当事者となって訴訟を行ったりすることもできます。
一方、パートナーシップは法人ではなくあくまで個人の集合体にすぎません。したがって、パートナーシップ自体がその構成員であるパートナー個人から離れ独立の法人格を持つことはありません。両者のこの概念の違いから、様々な法的・現実的差異があります。
パートナーシップの成立には、会社に要求されるような登記・登録は必要ありません。登録としては、パートナーシップがある名前を使用したい場合ビジネス・ネーム(商号)を取得することは認められます。また、そのパートナーシップの名をもって、代表者が一人で全員のために業務活動を行うこともできます。しかし法的には各パートナーの個別の権利が帰属するにすぎません。
一方株式会社では、株主の個性は重視されないので、株主の一人が死亡してもその地位は相続ができ、会社が消滅する原因になりませんが、パートナーシップでは構成員の人的要素が重視されます。そこで、パートナーの一人の破産や全員の死亡は原則としてパートナーシップの消滅原因となります。
また、パートナーシップに帰属する債務は無限責任で、それぞれのパートナーが個人資産の全てをもって返済する連帯責任を負います。この点株式会社では、会社の債務について責任を負うのは会社自体で、会社の所有者である株主は出資金(株の払込金)を限度とする有限責任しか負いません。会社では、個人資産と会社資産は別人のものとして厳格に区別がされます。
最近、Limited liability partnershipという新しいビジネスの形式を認める法律がシンガポールに導入されました。伝統的パートナーシップとは異なり、従来は会社にしか認められていなかった法人格が認められる形式のパートナーシップである点に特徴があります。この有限責任パートナーシップの場合、一般のパートナーシップや株式会社と区別するため、LLPまたはLimited Liability Partnershipを含む名前となります。これにより、小中規模や専門家の企業にとって企業形態の選択の幅が広がりました。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.038(2005年04月04日発行)」に掲載されたものです。
本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。