シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第5回 資生堂名誉会長 福原 義春

経営者コラム 社長の横顔

2019年10月25日

第5回 資生堂名誉会長 福原 義春

 「経営者と言うのは組織と闘う人ですよ。10年間資生堂社長をやって実感するのは、古い組織の在り方を見直して新たな組織を築いて、やがてその組織を破壊して、また新たな組織を作る。その位に経営を巡る時代の変化が著しく速いんですよ」

 

 福原義春は1931年生まれの88歳。創業者福原有信の孫だ。53年に慶応大学経済学部を卒業して入社。海外部長などを経て87年に第10代目社長に就任した。

 

 国際化路線を推進し、2014年に現在の名誉会長に就任した。企業メセナ協議会会長や日本蘭協会会長などの公職も歴任。その多彩な経歴が評価され、旭日重光章の叙勲を得ている。

 

 そんな福原の世上のイメージは「文化人経営者」だ。しかも財界きっての読書家にして文筆家。著書に「無用の人材 有用の人材」(祥伝社)などの幾多の企業リーダー論をものしている。更には蘭の大家としても著名で、蘭の専門書からプロはだしのカメラ作品集も世に出している。

 

 「私は若い頃から教条主義的・秩序系の孔孟思想よりも、その逆説的な老荘思想に引かれました。いわば二人の混沌系の壮大な宇宙観が昨今の複雑系の表現認識と共通点を感じますよ」

 

 福原の話は中国古典の四大思想家の「孔子」「孟子」「老子」「荘子」の比較論だ。福原には現代の企業リーダーは老荘思想から学ぶ点が多々あると言うのだ。

 

 かつて福原は私のインタビューにスラスラとこう述べた。

 

「私が荘子の一節で一番気にいっているのは “生命無き秩序よりも、生命ありき無秩序の方が尊い” という言葉です。ただし無秩序では組織が機能しませんから、目には見えないような糸を通す必要がある。現代のリーダーシップとはそのあたりにあるのではないかと思いますね」

 

 福原の認識する今日の企業経営は無秩序で混沌した社会状況にあり、ある意味ではそこにチャンスを見いだすか否か?重要なのは「時代の先」をどう読むか?その先見の明が必要と説くのだ。福原らしい解釈である。

 

 福原の文化人経営者の一面を裏付ける特質は豊富な読書量。しかも速読術の達人なのだ。コツは頁の見開きを一度に眼にして瞬時に内容把握することだと言う。

 

 さて最後に福原のユニークな人材論だ。福原曰く「スポンジ人間のススメ」である。

 

 「スポンジは水分をよく吸うのでぎゅっと絞ると直ぐに吐き出す。若い人はそうした柔軟な頭脳が必要。新しい知識をどんどん吸収し固定観念にとらわれないで欲しい」。以上である。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.351(2019年11月1日発行)」に掲載されたものです。

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