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座談会

2018年11月27日

シンガポールのこの一年を振り返る 2019年の日系企業の展望は!?

AsiaX:シンガポール政府の政策で注目しているものはありますか。

 

斯波:シンガポール政府は、AIなどの技術革新に伴って将来必要とされる労働力に変化が生じ、業種によっては多くの余剰人員が出ることに強い危機感を持っていて、産業転換計画(Industry Transformation Map)という政策の下で、例えば、労働力が過剰になりそうな業種の人材を労働力が不足する業種に斡旋し、受入先での人材育成の見返りとして一定期間の給与の一部を補填するなど、民間にも積極的に介入して来るべき将来に備えようとしています。その先手を打つ手法にはさすがシンガポールと思わされ、今後この政策がどのように展開されるか注目しています。
 もう一つは、国際税務です。近年、クロスボーダー取引が増える中、OECD主導で国際的なルール作りが進んでいます。今後は、各国でそれに従った法律が整備されていくと思います。シンガポールは、これまで優遇税制などにより積極的に外資を取り込んで成長してきましたが、今はむしろこの機運を自国のコンプライアンス強化や租税回避地としてのシンガポールのイメージの払拭するための好機と捉えているように見受けられます。

 

丸茂:私は来年4月に大幅改正される労働法の影響に注目しています。シンガポールは、労働法は非常に企業寄りで、しかも適用される人が非常に少なかったわけですが、改正により対象者が約40万人も増えます。シンガポール人を雇用している日系企業にとっても、知っていなければならないことは増えますから、セミナー等を開催するなどして情報提供をしていきたいと思っています。
 もう一つは、コーポレートガバナンスです。問題を早く認識すればするほど解決は簡単ですが、何もしないと時間も費用もかかります。コーポレートガバナンス関連の啓蒙活動にも取り組んで行きたいと思っています。

 

スマートシティ事業で 期待される日系の存在感

AsiaX:来年の抱負をお聞かせください。

 

石井:今年、ASEANではマレーシア首相がマハティール氏に交代しました。一部の国々が中国寄りになっていたこの地域ですが、マレーシアが軌道修正したことの影響は、他の国に対しても大きかったと思います。
 シンガポールは今年、ASEAN議長国を全うし、ASEANスマートシティーネットワークという枠組みを作りました。域内各主要都市の社会課題をデジタル化などにより解決しようということです。日本企業にもビジネスチャンスになりますので、議長国が交替した来年以降も日本やシンガポールの省庁・関連機関や関心企業と連携しながら食い込みたいですね。

 

清水:2019年にJCCIは創立50周年を迎えます。ASEAN各国に日本商工会議所があり、発展途上国ではルールの明確化やビジネス環境の改善に関する要望活動が特に必要とされています。一方で、シンガポールでは、ビジネスに直結する事業も強く求められており、節目の年を契機として、役割をもう一度見直したいと思っています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.340(2018年12月1日発行)」に掲載されたものです。(司会・編集/竹沢総司)

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