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座談会

2018年11月27日

シンガポールのこの一年を振り返る 2019年の日系企業の展望は!?

存在感示したシンガポール 課題への対応続いた日系企業

AsiaX:まず、今年印象に残る出来事を挙げていただけますか。

 

石井:今年は世界がとても動いた年であり、先が見えない時代の幕開けになったとも感じます。シンガポールが世界から注目された出来事として6月の米朝首脳会談は大きかったですね。滞りなく会談を終え、そうした環境を整えることができる国として、改めて認識されたと思います。

 

清水:金委員長とシンガポール外相がガーデン・バイ・ザ・ベイで撮った笑顔の写真がSNSで流れたというのも驚きましたし、シンガポールは世界に存在感をアピールできたのだと思います。

 

石井:今回の会談によって直接何らかの影響があったという日系企業の声は聞いていませんが、将来的に状況が好転した時に向け、準備を始めるマインドにはなったかもしれません。

 

AsiaX:この一年間、身近な部分ではいかがですか。

 

斯波:会計・税務まわりでは、2017年10月に移転価格税制における文書化が所得税法として法制化され、該当する会社は、2018年に終了する会計年度から法律により文書化が義務づけられました。日系企業も含め、対象となる企業が多くあります。
 さらに、会計基準にも大きな変更がいくつかありました。例えば、リースの会計基準では、事務所の賃貸などのオペレーティング・リースについて、借手はこれまで単にリース料を費用として損益計算書に計上すればよかったのですが、2019年に開始する会計年度からは、資産使用権とリース債務として貸借対照表に計上し、償却していくことになります。小規模な会社でも、オペレーティング・リース契約の一つや二つはたいていありますので、かなり多くの企業が影響を受けます。

 

丸茂:EPの厳格化の影響も日系社会では話題になりました。日本人在留者数もこの一年で約1,000人減って、3万6,500人弱になりました。

 

斯波:今年私が扱った案件は、例年に比べて閉鎖のご相談が多かったです。特に景気の影響などといった訳ではなく、個々の会社の事情によるものがほとんどでしたが、その背景には、EP厳格化などの影響もあるかもしれません。

 

清水:企業の視点では、ウォッチリストに掲載されていた企業数は大幅に減っており、現在は数社に留まっています。各社では、シンガポール人の雇用を増やしたり、様々な対応を行っているようです。リストに掲載されている企業数は減少しましたが、企業側にとって相当な負担がかかる政策ですので、引き続き状況は注視しています。

 

石井:シンガポールには地域統括事務所が多いので、本社とのコミュニケーションは重要です。人事改革には時間がかかるため、各社がシンガポール人雇用増に取り組み、今後の人材育成や研修計画を当局に示すなどの対応が求められると思います。

 

丸茂:日本人以外が代表者になっている企業も増えてきていますね。

 

清水:代表者だけではなく、日本人自体がシンガポール拠点からいなくなり、シンガポール日本商工会議所(JCCI)を退会する企業もチラホラ出てきています。また、EP発給の厳格化だけが要因ではないと思いますが、シンガポールの拠点に持たせていた一部の機能をタイやマレーシアなどに移転する企業もあり、シンガポール拠点の機能を絞っているケースも見受けられます。

 

石井:製造拠点から日本の本社に直接連絡することもあると聞いています。数年前に行った統括拠点調査によると、その役割・位置付けが難しいとのコメントもありました。しかし、世界各国のアジア拠点がシンガポールにあるので、情報収集しやすいのは事実です。

 

清水:シンガポール政府としても力を入れているAIやフィンテック関連企業などは、様々な進出メリットを享受しているように聞いています。ただ、やはり市場という観点では、人口も国土も限られていますので、厳しさも大いにあるかと思います。

 

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