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2009年4月20日

日本のソフトパワーの発信基地、ジャパンクリエイティブセンター完成目前「オール・ジャパンで盛り上げて行きましょう」

在シンガポール大使館次席(公使参事官)兼ジャパンクリエイティブセンター 川村博司さん

 

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アニメやマンガ、ファッション、Jポップなど日本発のポピュラーカルチャーが、アジアや欧米でもてはやされるようになって久しい。

そんな「現代若者文化」を経由して歌舞伎や文楽などの「伝統文化」にまで新たな関心が及び、広義の日本文化は「ジャパンクール」と呼ばれ注目を集めている。

パブリック・ディプロマシーの必要性が取り上げられる現在、その影響力が重要視されていることは周知の事実だ。そんな中、日本の外務省の直轄で、「ジャパン・クリエイティブ・センター(Japan Creative Centre, JCC)」が、今年の11月、シンガポールに正式に設立される。

海外での現代日本文化の情報発信強化を目的として、日本政府が機関を設置するのは、シンガポールが初の試みとなる。

 

今年1月にJCC所長に就任したばかりの川村博司氏に、今後JCCがどのように機能し、文化交流を促進していくのかについて聞いた。

シンガポールのJCC、日本の現代文化情報発信拠点として

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JCC設立の発端は、2007年に開催された日シンガポール首脳会談まで遡る。欧米各国は、ブリティッシュ・カウンシル、ジャーマンセンター、アリアンス・フランセーズなど、言語教育や芸術文化を発信する拠点をシンガポールに構える一方で、注目度の高い日本の発信拠点がないのは惜しい、是非それを設立してもらえないだろうか、とリー・シェンロン首相からの提案を受け、二国間で合意に至ったのがきっかけだ。

 

「その首脳会談での決定を踏まえ、日本の「いま」を伝えることに特化した新しい情報発信拠点を設立することになりました。まずは、シンガポールで、そして、ここを拠点に今後は広く東南アジアに向けて発信できればと考えています。」と、川村氏は説明した。

 

「JCCでは、日本のハイテク、デザイン、食文化、伝統芸能、伝統工芸、音楽、アニメ、マンガと、幅広い分野をカバーしていきます。シンガポールの若者の間でとても人気のある日本のコスプレも、現代の日本文化として視野に入れています。日本のアニメのヒーローやヒロインになりたいとコスプレに情熱を傾けている彼らは、それをきっかけに日本語を熱心に勉強したりと、とても素朴な気持ちで取り組んでいます。JCCとして、支援するに十分値すると考えています。」と語る。実際、シンガポールの日本語検定の受験者は年間で5000人近くにも上り、その多くは日本のアニメやマンガへの関心がきっかけとなったと答えている。

 

東南アジアでは、バンコクやクアラルンプールなど、国際交流基金が事務所を構え、文化交流を支援しているが、JCCでは、より「新しい日本」を紹介するために、現地の状況に沿った柔軟な対応を目指している。

 

「既に日本に関心を持っている方には、理解を深めて行くためのサポートを、そしてまだ日本に関心のないグループに、日本ファンをいかに増やしていくのか、というのが課題です。在任中は、できうる限り、日本のソフトパワーの発信に努めていきたいです。」と、川村氏は初代所長としての抱負を語った。また、「日本は、シンガポールやアジアにおいて既に知られており、更に浸透させていくことは挑戦です。多くの人が面白いと感じるイベントをどんどん企画することで盛り上げていきたいですね。」とつけ加えた。

 

JCCのプレイベントとして、昨年からメディア芸術祭、日本の広告写真展などが開催され、多くの人々が訪れ好評を博した。川村氏は、それらを通して、JCCへの関心、期待の高さに驚いたという。「JCCの設立状況や、イベントスケジュールの問い合わせ、中にはJCCで働きたいという声もあります。勿論、JCCの活動を通じて、日本企業がシンガポール企業とコラボレーションを試みるなど、産業面での活性化も期待されています。」と語った。一方で、「文化交流の成果というのは、すぐ目に見えてはこないので、地道にやって行きたい。JCCを通して、将来この国を背負う若い人達が日本のファンになって、更なる理解を深めてもらう事で、将来の両国の課題を共に解決していくような友好的な関係を築く土台になれば、と考えています。」と、長期的なビジョンを語った。

 

ジャパンクリエイティブセンターの全貌とその機能

ジャパンクリエイティブセンターとなる場所は、ナッシムロード沿いのコロニアル様式の建物。450㎡の平屋建ての建物は現在改修中だ。JCCのセンターの構想やデザインは、工業デザイナーでプロデューサーとして世界的にも著名な喜多俊之氏が担当している。

センターの中には、50名を収容する多目的スペース、小規模の展覧会向きの展示スペース、視聴覚機材を供えた体感スペースが整う予定だ。それぞれのスペースは、一般の人々が無料で利用できる予定で、日本の情報発信が目的であれば、個展や企業のセミナーなどに積極的に活用してもらいたいという。実際のプログラムの開催の可否に関しては、JCCによる許可が必要だが、「ソフトパワーを担う民間のイニシアチブを期待しています。JCCを有効活用するアイデアがあれば、是非様々な企画を持ち込んで欲しいです。」と川村氏は呼びかける。

 

今後の予定は、大規模なものでは、8月の日本映画祭開催のほか、11月のセンターの開館に合せたラウンチイベントでは、日本のグッドデザイン賞受賞作品の展示と、これまでの歩み等を展示する予定。また、来年1月には、本格的な能の舞台上演を企画中だという。また、従来の日本人会主催の夏祭り、1~2月のチンゲイパレードなども、日本の祭りの要素を存分に取り入れるべく、協力して行く意向だと語った。その他、コスプレ大会の支援、フォーラムやコンサートの開催など、今年から来年にかけて数々のイベントが目白押しとなっている。

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初代所長として、その重責を担う川村氏の座右の銘は、「Practice makes perfect」。日本という国の役に立ちたくて、子供の頃から外交官を目指したという川村氏。JCCの所長を任された事で、日本を世界に宣伝するということで貢献できればと思います、と話す。趣味は手品で、外務省に入省間もない頃、通訳を務めた外務大臣が、手品の特技を晩餐の席で各国の来賓に披露して場を和ませていたのを見て感銘を受け、自分も手品を学び始めたという。現在では練習の成果もあり、その腕前を披露する機会も多いと言う。

 

個人や職場の間でさえ、コミュニケーションは容易でない。国籍や文化が違えばなおさらだ。そこに何か、清涼剤的な共通の驚きや感動があれば、コミュニケーションを円滑に進めるきっかけとなるだろう。川村氏のエピソードは、日本のソフトパワーが、その相互理解のきっかけになり、よりよい未来を築く可能性を秘めていることにリンクする。 近未来型のパブリック・ディプロマシーを具現化する道を開いて行く意味でも、シンガポールでのJCCが担う役割は想像以上に大きい。世界とつながるために我々に出来る事を積極的に考える機会となるに違いない。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.143(2009年04月20日発行)」に掲載されたものです。
文=桑島千春

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