2019年3月21日
金融庁執行部が初報告書、金融犯罪抑止に軸足
シンガポール金融管理庁(MAS=中央銀行)の法執行部は初めて、金融犯罪抑止のためどのような活動を行っているかを説明した報告書を公表した。金融センターとしてのシンガポールの名声の維持、向上に向けた努力の一環だという。
同部は2016年の設立で、報告書では17年中頃から18年末までの活動をまとめた。この間、金融機関に出した警告は223件、監督面での注意が444件。金融業での活動禁止を個人に命じる禁止命令は19件、けん責処分が37件、文書による忠告が31件だった。
こうした、相手の状態に応じた指導が奏功したようで、刑事罰に問われた事件は1件にとどまった。発表会見でギリアン・タン専務理事は「摘発される可能性があるとの恐れから犯罪が予防された」と語った。
法執行部は1年半ごとに報告書をまとめ公表する。調査対象は、銀行、保険会社、資本市場における不正行為で、市民の注目を集めたのはマレーシアの国営投資ファンド、ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)をめぐる公金横領・資金洗浄疑惑。
各事件の捜査に要した時間は平均8カ月で、犯罪訴追に要した時間は33カ月と、ほかの国より短い。
MASが開発したものに拡張インテリジェンス・ツールがある。捜査員の考え方を体系的にしたもので、証券市場での不正行為を探り当てる。98%の精度を達成しており、既に実際の場で利用している。
MASと協力し、ホワイトカラー犯罪を取り締まっている商事調査局(CAD)は13件の犯罪を摘発し、有罪判決を得ている。