シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『夜想曲集』カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2009年8月17日

『夜想曲集』カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳

photo-2『わたしを離さないで』から4年。ブッカー賞を受賞した日系イギリス人作家であるカズオ・イシグロの初短篇集が本書、『夜想曲集』である。訳者あとがきに書いてあるが、意外にも欧米では短篇集のマーケットは長篇小説のそれに比べ著しく小さいらしく、どうも欧米の読者は新しい小説世界にスラスラと移っていくのがあまり得意ではないらしい。数々の有名な短篇小説があるのを知っていると実に意外であるが、そういう意味ではチャレンジングな一冊であるのかもしれない。

本書は音楽と夕暮れをめぐる五つの物語と副題にあるように音楽を一つのテーマとして男と女のすれ違いやうまく事の進まないその人生模様を描いていく。夕暮れの光のような物悲しさと温かさが入り混じった五つの物語はカズオ・イシグロの新境地になるかもしれない。是非、読んでみていただきたい一冊。

 

早川書房

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.151(2009年08月17日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 里見

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