2011年6月6日
『サイゴンから来た妻と娘』近藤紘一
先日の3連休にホーチミンに行って来た。約10年前、大学時代に初めて訪れてから、考えてみると4回目のホーチミン。訪れる度に、「うーん、成長著しいとはこういうことか」と感じさせられる。乗ったタクシーの運転手は「急激なインフレで暮らしは厳しい」としきりに愚痴を言っており、実際にそうであろう、と容易に想像はつくのだが、そのタクシーも立派なトヨタ車に変わっており乗り心地は快適、「うーん、良くなったなぁ」と思ってしまう。
と、そんな旅の想い出話はさておき、今回の旅行で久しぶりに再読してみたのが今回ご紹介する本書、『サイゴンから来た妻と娘』。著者は先日、アジア絶版文庫シリーズとして紀伊國屋海外店限定で復刻販売した『目撃者』の著者、近藤紘一である。ベトナム戦争時に南ベトナムのサイゴン特派員として赴任した著者が現地で得た妻と娘、その妻と娘を連れて日本へ……。ユーモラスに描かれるのは日々ぶつかる文化の違い、そして妻と娘への愛情。軽妙な語り口ではあるものの、行間からその深い考察を感じさせるまさに名著である。久しぶりに読み直したが、いつ読み直しても新たな発見を感じさせる。是非、手に取ってみてはいかが。
文藝春秋/ISBN:9784167269012
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.190(2011年06月06日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 里見