シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP『津波災害』河田恵昭

紀伊国屋「おすすめの1冊」

2011年5月16日

『津波災害』河田恵昭

photo-3この本の出版は2010年2月27日に発生したチリ沖地震津波がきっかけになっている。3月11日の東日本大震災の前に出版されたのだが、「沿岸の住民がすぐに避難しなければ、近い将来確実に起こると予想されている、東海・東南海・南海地震津波や三陸津波の来襲に際して、万を超える犠牲者が発生しかねない」と、今となっては現実となってしまった予測がまえがきで述べられているのが印象的。

瀬戸内に生まれ育った私には津波がどういうものかわからなかった。津波は「高い波」というより、「速い流れ」と考えた方が正しい。本書からの引用だが、停泊していた船が陸に押し寄せ、駐車していた車がミニカーのように流されていく様子を見るまで、ずっと高い波が襲ってくるものだと思っていた。今思えば、漫画か映画の影響だったのだと思う。復興にはまだまだ時間がかかるが、我々は減災社会を築いていく必要がある。本書では具体的な施策が提案されており、そのままそっくり採用できそうなものも多い。定期的に避難訓練に参加したり、後世に語り継いだり、といったことであれば私にも実行可能だと思う。

 

岩波書店/ISBN:9784004312864

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.189(2011年05月16日発行)」に掲載されたものです。
文=シンガポール紀伊國屋書店 茂見

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