ライフスタイルの小さな変化によるストレスが及ぼす危機

　海外へ引っ越して、言語、文化、習慣が大きく変わると、大人にとっても子どもにとっても大きなストレスとなる可能性があります。それだけでなく、ライフスタイルの小さな変化によって、自分が気づかないところでストレスを引き起こしていることもあります。
 

ライフスタイルの小さな変化とは

　例えば、以下のようなことが考えられます。
 
　・夫婦2人の生活から子どもが生まれて、幼い子どもを中心とした生活に変化する。それにより、自分の仕事の時間や趣味の時間が減る。
　・夫婦共働きから、夫あるいは妻のみが働く生活に変化する。それにより、どちらか片方が家事や育児の役割を一気に担う。
　・子どもの進学に伴い、子どものいる生活から、夫婦2人の生活に変化する。それにより、子どものために費やしてきた時間がぽっかり空いてしまう。
　・現在のようなCovid-19の影響により、オフィスワークから在宅ワークへ変化する。それにより、夫婦が同じ空間にいる時間が圧倒的に増える。
　・毎年夏と冬は一時帰国していたが、Covid-19の影響がでた昨年から一時帰国ができなくなり、1年のライフスタイルが変化する。それにより、仕事と休暇の切り替えがしにくくなっている。
 
　これらの変化には、自分が予想できていたことと予想できなかったことがあります。自分が予想し、それを期待していたことであれば、その変化を肯定的に捉え、スムーズに適応していくことができるでしょう。その一方で、その変化が予想できず期待していなかったならば、否定的に捉えて、気づかないうちに何かしらのストレス症状が現れることもあります。
 
　ストレスの症状には、
　・イライラ、怒りっぽい、抑うつ感、不安感、元気がないなどの気分症状
　・不眠、食欲減退、過食、頭痛、下痢、便秘、頻尿、めまいなどの身体的症状
　・注意力低下、集中力低下、判断力低下、仕事への意欲低下、外出が億劫などの行動症状
　 
　などがあげられます。また、周りの人や出来事、自分自身に対して、否定的で悲観的な思考をしやすくなることもあります。
 

親から子に伝わってしまうストレス

　職場の人や知人、友人に対しては、冷静に理性的に振る舞えることが多いと思いますが、家族、特に子どもに対して、つい怒りっぽくなったり感情的になったりしてしまうこともあります。親が何かしらのストレスを抱えていると、言葉の端々や表情、態度、行動などの非言語情報から家族にも伝わり、それによって、子どもがストレス反応を示すこともあります。
 
　例えば、「子どもが学校や幼稚園・保育園へ行きたがらなくなった」「一人で寝るのを嫌がるようになった」「反抗的な言動をするようになった」「学習への意欲が低下した」「小さなことを不安がるようになった」「些細なことで癇癪を起こすようになった」などが見られることがあります。
 
　最近、子どもの様子が変わったな、どこかおかしいなと感じたら、子どもに何か嫌なこと、変わったことがあったか聞いてあげることも大切です。また、大人自身が気づかないうちにストレスを抱えていないか、ライフスタイルの変化に戸惑い、不安に感じていないか、自分自身を振り返ることも大事なことです。自分の心の状態に気づくことによって、イライラやモヤモヤに振り回されずに、落ち着いて子どもに接することができるようになります。
 

「危機は転機」

　予想していなかったライフスタイルの変化は、ある種の“危機”となるので、ストレスを引き起こす可能性がありますが、危機を英語で表す「Crisis」は、「転機」や「転換点」という意味もあります。日本語でも「危機は転機」と言われることもあります。新しい状況や習慣への転換には、ある一定の期間が必要だと言われていますので、“今は、転換のプロセスにいるのだ”と現在の自分がいる位置を客観的に捉え、“どのように変化をしていこうか”と主体的に今できることを実践してみると良いと思います。