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健康南十字星

2021年3月1日

長引く新型コロナウイルス感染の影響 ~こころとからだの健康の観点から~

 2019年末から始まった新型コロナウイルス感染(以下、コロナ禍)。皆さまの日常生活にも大なり小なり影響があると思います。ただでさえ慣れない土地に住んでいると、心身に不調を来たしやすいですが、コロナ禍以降、更に負担がかかっている可能性は大きいと思います。今回は、長引くコロナ禍での心身に及ぼす影響ついて一般的な注意点を述べていきたいと思います。尚、本記事は日本からシンガポールに来られた方を念頭に置いて書いておりますが、それ以外の皆さまにも当てはまることはあると思いますので、読み進めていただけると幸いです。
 

想定外や前例のない状況下、こころやからだに変調を来しやすい

 まず今置かれている状況が、想定外、若しくは前例のないストレスフルな状況だということです。ほとんどの皆さまがシンガポールは日本をはじめとするアジア諸国に簡単に行ける場所、世界各国への交通の便が良いところとの認識があったと思います。実際、コロナ禍前は日本の複数の都市への直行便が一日何便もあり、世界の多くの都市に気軽に行ける場所でした。ところが今はどうでしょう。飛行機の便数も減り、出入国時は待機期間があり、抗体検査がありと非常に煩雑です。果たしてここまで覚悟してシンガポールに来られた方はいらっしゃるでしょうか?コロナ禍後に来られた方でも、これまでにいろんなことがあって疲労困憊というのが本音ではないでしょうか?人は想定外や前例のない状況でストレスにさらされ続けると、こころやからだに変調を来しやすくなります。
 

眠れない、食欲がない、疲れやすいなど

 からだの変調に気づきにくい方、あるいは気づいても我慢する方もいらっしゃるようですが、御自身で早期発見して早めに対策をとることは重要です。何故ならば、早めに対応すれば症状の悪化を最小限に食い止めることが可能だからです。例えば、眠れずに「日中眠い」など睡眠に関すること、「食欲がない」などの食欲低下、「最近疲れやすくなった」などの易疲労感、その他、からだに不調を来したとき、先ずは無理をせず、いつもよりゆっくりとしたスケジュールで生活することをお勧めします。忙しくて時間が取れないときでも、少しでも休み時間を作ることと、寝る前に重い事柄を考えず、ゆっくりぼんやりとすること、つまりオンとオフのメリハリをつけることで寧ろ効率が上がり、新たなアイディアが浮かぶこともあります。皆さまも試みては如何でしょうか。
 

楽しめない、興味がわかない、イライラ、不安など

 こころの変調についても同様です。以前楽しめていたことが楽しめない、物事への興味がわかなくなる、他人の言動にイライラすることが増えている、なんとなく不安感に支配されているなど、こころが不調な状態のときも、焦らずに意識的に休むことをお勧めします。人によっては、こころの変調を”自分の弱さ”だと決めつけて自分を厳しく戒めることもあります。こころが不調の時は、往々にして疲れている時です。自分を追い込むことで、更に疲れを助長させてしまうので避けて頂きたいです。

 

一人で悩まないで

 海外生活、特に在宅勤務であまり人と会わずに過ごしていると、悶々と考えてしまうことが多くなると思います。特にからだやこころの不調については、一人で悩んでしまうと、視野が狭くなり否定的な考えに陥りがちです。できれば、友人や家族にご自身の不調について相談できると良いかと思います。近くに話せる人がいない場合、最近はネットを通じて音声と画像でリアルタイムに交流ができるので活用いただくのも一案です。もし、ご自身の不調を周りに話すことに気おくれしてしまう方や専門家に相談したいという方がいらっしゃいましたら、医療機関の受診などもお勧めします。

 

◆執筆者

 
シンガポール日本人会クリニック
白井隆光(しらい・たかみつ) 

医師
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医

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