シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP「わかっているけれど、やめられない…」そんなことはありませんか?

健康南十字星

2021年1月4日

「わかっているけれど、やめられない…」そんなことはありませんか?

 謹んで新年のお喜びを申し上げます。
 皆様、いかがお過ごしでしょうか。今年のお正月は、ご自宅でご家族一緒にのんびり過ごされた方も多かったのではないでしょうか。2021年が、皆様にとって笑顔あふれる年になりますようにお祈り申し上げます。
 
 昨年は一年を通して、世界中がCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大の影響を受けてきました。ここシンガポールでは、2020年2月より感染症の警戒レベルを示す「DORSCON」が4段階の上から2番目のオレンジに引き上げられ、国を挙げての感染対策に取り組み、さまざまな規制が行われました。本稿執筆時点では、市中感染による新規感染者数は非常に低く抑えられているため、段階的に規制を緩めていく対策が講じられています。また、多くの職種で、在宅勤務が推奨され、仲間内で集まる人数も制限されていたことから、外で集まって飲食する機会が減ったという方も多いのではないでしょうか。
 
 一方で、家庭で過ごす時間が多くなることによって、酒量の増加やスマートフォン、ゲームに接する時間が増えた方はおられませんか?先行きの見えない不安や友人と会えなくて寂しいといった気持ちをお酒やゲームが紛らわしてくれることもあったかもしれません。しかし、そういった積み重ねから、少しずつ普段の生活に支障が出始めると、「自分自身をコントロールする力」が弱くなってしまうことがあります。そこで、今回は、「わかっているけれど、やめられない…」といった依存症についてご紹介いたします。
 

依存症の対象は「モノ」「行為」「人」

 依存症と聞くと、さまざまな報道から、薬物やアルコールの印象が強い方も多いかと思いますが、依存症の対象は多種多様です。覚せい剤やドラックといった薬物、アルコール、ギャンブル、買い物、インターネット、スマホ、ゲーム、恋愛や性等々、その対象は多岐にわたっています。
 

依存症による身体と心への影響

 アルコールやゲームを身近な例として挙げてみると、飲酒量やゲームのプレイ時間の増加によって、睡眠のリズムが乱れ、朝起きることができなくなったり、食事やその他の時間にも影響が出てくることがあります。例えば、アルコールを飲んで酔うと「寝つき」が良くなったように感じることがありますが、逆に眠りは浅くなってしまい、睡眠の質は悪くなると言われています。また、飲酒やゲームを繰り返すうちに抑制がきかず、その刺激を追求することが第一優先になり、刺激がないと身体や心に不快な症状を引き起こします。その結果、感情制御ができなくなったり、注意をすると激しく怒るなどの症状として現れる場合があります。
 

依存症の行動について

 依存症になると、ある対象に対して執着し、抑制しようとしてもできない状態になり、何度も繰り返してしまいます。また、冷静に考えることができなくなり、他のことに目がいかなくなってしまうことがあります。さらに、より強い刺激を求めてしまうことで家族や仲間を巻き込むトラブルに繋がったり、信頼を失ってしまうことがあります。
 


 
 日常の中で、ほんの憂さ晴らし程度でやっていたことも、自分でも気づかないうちに、抜けられなくなってしまって…といったことや、やめた方がいいとわかっているけれどやめられなくて…といったことがあるかもしれません。誰でも、ある対象(アルコールやゲーム等)を始めた頃は、自分なりにコントロールしているものです。しかし、それを続けているうちに依存が進行してきて、さまざまな問題が生じる場合があります。まずは、ご本人でも、ご家族だけでも相談できる方から繋がることが大切です。もし、お困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
 

<参考文献>
榎本稔(2016)『よくわかる依存症』主婦の友社
松本俊彦・今村芙美(2015)『SMARPP-24物質使用障害治療プログラム』金剛出版
◆執筆者
シンガポール日本人会クリニック
松永 法子 (まつなが のりこ)

  
資格:公認心理師・臨床心理士・保育士
通信制高校・中学校・教育支援センターで児童・生徒の支援、子育て支援センターで乳幼児健診後のフォローアップや子どもやその保護者を対象にした相談、医療機関勤務(精神科)を経て、2018年12月より現職。
 

シンガポール日本人会クリニック

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