昼間の眠気はありませんか？～睡眠時無呼吸症候群について～

昼間の眠気

　眠は健康の元ですが、睡眠が不足していると感じている方は少なくなく、ビジネスパーソンの80％が昼間に眠気を感じているともいわれています。どこでもすぐに眠れるのを特技だとする方は、潜在的な眠気があるかもしれません。
 
　眠いと集中力を保ちにくく、良いアイデアも思い浮かばず、ミスもしやすくなります。今回のテーマの睡眠時無呼吸症候群では、交通事故を起こす確率は健常人の7倍にもなるという統計もあります。　
 

睡眠時無呼吸症候群ってどんな病気？

　睡眠時無呼吸症候群は睡眠の質が落ちてしまう病気です。
 
　7時間ぐらい寝ていても、すっきりしないとおっしゃられる方、いびきをかいてはいないでしょうか？いびきがうるさくて眠れないと御家族に指摘されたことはないでしょうか？もしそうなら、睡眠の質が落ちているかもしれません。実は、睡眠不足は、時間の不足より睡眠の質の低下が問題なのです。日本人の成人男性の3～7％、成人女性の2～5％、小児でも1～3％の方がこの疾患にかかっているといわれます。
 
　睡眠時無呼吸症候群にはいくつか種類がありますが、その多くを占める閉塞型では、肥満などで増えた喉の奥の組織が睡眠中に緩み、空気の通り道（気道）が狭くなるため、いびきが生じます。更には、完全に塞がってしまうこともあります。（これは、顎が小さめなど骨格的な理由があれば、やせていても起こりえます。睡眠時無呼吸症候群の20～30％の方は肥満ではないのです。）
 
　気道が塞がると、呼吸が止まります。すると体は酸素不足に陥り、そのまま呼吸をしなければ命に係わるので、脳から覚醒を促す命令がでて目覚め、強制的に呼吸が行われることになります。結果、命は助かりますが、睡眠中にこうしたことが繰り返されると、脳を休息させる深い睡眠がとりにくくなります。これが、睡眠の質の低下です。時間的には十分なはずなのに、朝、すっきり感がなく、頭痛、疲労を感じます。それでも、仕事には行かなくてはなりません。これは体力的にも、精神的にもよくありません。実際、成人で中等症以上の睡眠時無呼吸症候群では8～10年間で約30％以上の死亡率があるという報告があります。
 

深睡眠と成長ホルモン

　深い睡眠がとれないと、成長ホルモンが十分には分泌されません。成人にとって成人ホルモンはいわば、体を修復するホルモンです。昼間の間に体の組織はさまざまに傷つきますが、深睡眠がとれると、成長ホルモンがしっかり分泌されて修復することができます。逆にきちんと眠れないと、修復がうまくいかないことになります。また、深睡眠は免疫力のアップや代謝を高く保つことにもつながります。新型コロナウイルスに対処するためにも良好な睡眠をとりたいものです。代謝が高ければ、体重を減らすのもより容易になります。好ましい循環が回りだします。
 

検査

　睡眠時無呼吸症候群の検査としては、スリープテストというものがあります。これは一晩ご自宅で検査機器を装着して眠るという簡便なものです。翌朝、検査機器を返却していただき、解析します。睡眠の深さや酸素濃度、いびきの大きさなどがわかります。また、必要に応じ、耳鼻科で鼻から喉にかけてチェックして頂くことがあります。
 

治療

　治療としては、重症度にもよりますが、CPAPという機器を使用します。これは、睡眠時に気道が塞がらないように空気を送り込むものです。最初は不快でも慣れると深睡眠がとれるようになり、上述の好ましい循環が回りだします。成果を示す例として、CPAPをつけた後、交通事故率（健常人の7倍）が一般人と同じまで低下したというイギリスからの報告があります。
 

最後に

　日中の眠気の原因には他にも、ナルコレプシー、特発性過眠症、反復性過眠症、うつ病や月経前症候群などもあります。気になるようでしたら、ご相談ください。
 

◆執筆者

シンガポール日本人会クリニック
日暮　浩実（ひぐらし・ひろみ）
  
千葉大学医学部・同大学院修了（呼吸器内科学）医師、医学博士
Singapore College of Traditional Chinese Medicine卒、
シンガポール保健省認定鍼灸師、日本内科学会総合内科専門医、認定内科医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本結核病学会結核・抗酸菌症認定医、International Society of Travel Medicine Certificate in Travel Health 所持、Singapore National skin Center Alumnus
 
 

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