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健康南十字星

2020年9月3日

COVID-19流行下のメンタルヘルス対策 ~在宅勤務の留意点~

 COVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大は、シンガポールの経済へ多大な打撃を与え、今後の日系企業や在星邦人の経済活動への更なる影響も懸念されています。今回のCOVID-19の感染対策として、在宅勤務(テレワーク・Work From Home)が一気に普及しました。それにより職場内でのコミュニケーションをこれまで通りに取ることが出来ない、公私の区別が付けづらい等、これまでとは異なったストレスフルな環境の中、「コロナ禍」のニューノーマルの構築に試行錯誤されているかと思います。
 
 元来人間は、新しい環境に適応する能力を持っています。しかし、その過程にはある程度の時間が必要です。ストレス因が余りに大きかったり、短期間に多くのストレス因にさらされてしまって個人にとっての限界を超えると、適応障害を引き起こすだけなでなく、重篤化するとうつ病などを発症することがあります。
 
 本稿執筆時点(2020年8月中旬)では感染対策の規制が緩和しつつあり、完全在宅勤務の方は減少しつつあるようです。しかし今後の状況によっては在宅勤務が長期化したり、再度厳しくなる可能性があります。そこで在宅勤務の際、メンタルヘルス不調を予防するために個人が出来ることとして、4つの留意点をご紹介します。

 

1.規則正しい生活を心掛ける

 在宅勤務は、出勤・退勤の時間に拘束されないため、生活リズムが乱れがちになります。健康的な生活のために、ごく基本的なことですが、就寝・起床時間はなるべくこれまで通りとし、バランスの取れた食事を取り、お酒の飲みすぎには注意しましょう。
 

2.業務とプライベートの切り替えを心掛ける

 オフィスに出勤する場合と異なり、業務とプライベートの時間の切り替えが難しくなります。勤務時間中はオフィス勤務時と同じ服装をする、メールの連絡は平常時の退勤時間で終えるなど区切りを付けましょう。ご夫婦共に在宅勤務で、お子さんが在宅学習中や休暇中の場合、夫婦交代で別室で仕事に集中出来る時間を取れるようシフトを組むことをお薦めします。
 

3.文字以外のコミュニケーション方法を取り入れる

 メールやチャット等でのコミュニケーションを取る機会が多くなりがちです。文字によるコミュニケーションでは、ニュアンスが伝わりにくいなどの理由から、思わぬ誤解が生じることがあるかも知れません。電話やオンライン通話など、声や画面を介したツールを併用することで、コミュニケーションのすれ違いを予防できる場合があります。時には雑談の機会もあるとよいでしょう。
 

4.気分転換の時間を取る

 勤務前後や休日には、活動が制限されている中でも出来るランニングやウォーキングや自宅で出来るヨガやストレッチなどの運動、遠方の家族や友人とのオンライン通話などの余暇活動、そして時々自分一人でほっと出来る時間も持つことをお勧めしています。
 
 
 「疲れたな」「ここ最近何となく体調が優れないな」と感じた際、もちろんそれが一過性のものに過ぎない場合もあります。ただこれまでよりも「眠れない」「食欲がない」「何もする気が起こらない」「感情のコントロールが出来ない」など、心身の調子に変化を来たした時、それは心と体が黄色信号を出しているのかも知れません。
 
 こういったメンタルヘルスの問題、とりわけ“こころの悩み”を相談するとき、どうしても母国語が必要になると言われています。皆さん、心と体が赤信号を出してダウンしてしまう前にどうぞ専門家にご相談ください。また、皆さんにとって当クリニックがその一助となればと思います。
 

<参考文献>
日本渡航医学会・日本産業衛生学会 職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド 第2版
『異国でこころを病んだ時―在外メンタルヘルスの現場から』(弘文堂)

 

◆執筆者

シンガポール日本人会クリニック 臨床心理士・公認心理師・産業カウンセラー
原田舞香(はらだ まいか)

  
資格取得後、心療内科、大学研究機関、独立行政法人等にて勤務。中国・北京駐在への帯同を経験。現在、シンガポール日本人会クリニックに勤務(非常勤)。専門は海外在住日本人のメンタルヘルス対策、女性のライフキャリア支援、勤労者のメンタルへルス対策。
 
 

シンガポール日本人会クリニック

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