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健康南十字星

2021年7月7日

コロナ禍における、子どもの運動の確保について考える

 世界的な感染拡大を見せている新型コロナウイルス(以下、コロナ)、シンガポールでは昨年度のロックダウン以降、市中感染を抑制できていたものの今年度に入り新たにクラスターが発生し、再度Phase2の規制が適応されました(2021年5月時点)。コロナが発生して以来、特に外出制限、屋内での運動、多人数での集まり、外食が強く規制されています。今までは当たり前と思っていたことができなくなるなど、私達の生活に大きな変化をもたらしていると思います。今回はその中でも、子ども達の運動に焦点を当てて話を進めていきたいと思います。
 
 皆さんは子ども、特に幼児期の運動についてどのような意識をお持ちでしょうか?おそらく、経験的に「外遊びは大事。体をいっぱい動かして遊んでほしい」という気持ちをお持ちの方が多くいらっしゃると思います。ただ、個人的にですが、そもそもコロナが広まる以前からシンガポールの子ども達は日本の幼児期の子ども達より外遊びや運動の時間は少ない印象を受けていました。背景には、シンガポールならではの暑さや文化も影響していると思います。シンガポールの日中はとても暑く、大人でも長時間外で活動するのは辛いですよね。では外遊びが難しいからと屋内での活動を確保しようとしても、残念ながら日本の児童館のような施設はなく日常的に体をたっぷり使って遊ぶことが難しい状況だと思います。そのような中でも、皆さん様々な工夫をされて運動を取り入れていたと思います。しかし、そこにきてコロナ対策の規制が出され、一時はプレイグラウンドの封鎖もありましたし、外出自粛や人との接触機会の減少など、更に運動を確保するのが困難な状況になりました。おそらくコロナ禍により、大人のみならず子どもも運動不足になったと感じる方も多いと思います。体を動かして遊ぶ機会の減少は、体力の低下のみならず、気力の低下など精神面、心の発達へも影響を及ぼします。
 
 幼児期における運動の意義は、1.体力・運動能力の向上、2.健康的な体の育成、3.意欲的な心の育成、4.社会適応力の発達、5.認知的能力の発達、が挙げられます。これらは、その期間の体や心の健康を保つのに必要なことはもちろん、今後の成長や獲得できうる能力にも影響を与えます。幼児期の間に、基本的な粗大運動、歩く、走る、跳ぶ、のぼる、ぶらさがるなどの動きや、バランス能力、協調動作、投げる、捕る、蹴るなどの四肢を使った動きなど、様々な動き、運動を経験しておくことが、後の運動能力にも影響していきます。
 
 もちろんこれらの運動は、外遊びとして自然の中で経験できることも多いですが、規制下においても、家庭内で工夫して確保することも可能と考えます。また、幼児期における一日の必要運動時間は60分以上と言われています。一気に60分でなくても、一日を通してトータル60分が目安です。幼児の間は、運動として取り組むというより遊びの中に運動の要素が入るといったイメージで取り組んでもらうといいかと思います。例えば、絵本の中の動物の動きを一緒に真似したり、ストーリーに沿って疑似体験をしてみたり、また、お手伝いを通して動きのバリエーションを増やしていくのも効果的だと思います。何よりも、お子さんと一緒に楽しく取り組んでいくことが一番大切です。体を動かすことが楽しいと感じてもらうことが大事です。
 
 家庭内でできる活動に取り組みつつ、できる範囲で外遊びの時間も取り入れられるといいと思います。散歩をするだけでも、脳も体も十分に刺激されます。

 
 コロナ禍での厳しい環境の中で、子ども達の育つ環境も大きく変化しています。今後も、感染者の変動に併せ規制は変化していくと思いますが、その都度できる方法を模索しながら子どもの健全な心と体の発達を保障していけたらと考えます。

 

<参考文献>
文部科学省、幼児期運動指針策定委員会;2012年「幼児期運動指針」

 

◆執筆者
シンガポール日本人会クリニック 重松美穂(しげまつみほ)

資格:理学療法士
日本では、重症心身障がい児施設勤務。重度障がい児・者、発達障がい児、健診後のフォローなどのリハビリに関与。2019年より当クリニックにて、赤ちゃん体操クラス開講。今年度よりトドラークラス開講。個別運動療法も開始。

 

シンガポール日本人会クリニック

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