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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2020年5月10日

新型コロナウイルス流行とシンガポール不動産市況(その2)

 シンガポールでも日本でも3月下旬以降状況が激変し、いわば非常事態宣言が出されて、戦時統制経済のような状況になりつつあります。今後のシンガポール不動産市況はどうなるのでしょうか?以下本稿執筆時点(2020年4月上旬)の情報に基づいて記します。
 

住宅賃貸・売買市況への影響
「凍てつき状態」から「下落」へ?

 新型コロナウイルスの感染拡大は、世界的に予想を遥かに上回っており、”平時”の問題ではなく、むしろ第二次世界大戦にも匹敵する”戦時”同様の国家・人類存亡の危機とも懸念され始めています。その結果、経済を犠牲にしてでも、人命ならびに国家を救うことが最優先となり、かかる有事には不動産相場、特に投資物件の売買市況は下落や暴落に繋がりえます。
 
 2003年4~6月のSARS流行時は何とか持ちこたえた相場も、今回はリーマン・ショック時と同様、あるいはそれ以上の打撃も懸念されています。
 

”有事統制経済”の始まり

 シンガポールではCircuit Breaker(電源遮断スイッチ、いわゆるブレーカー)と呼称する、部分的ながらもロックダウンにかなり近い制限が4月7日からかかっており、医療の他に食品やライフラインなどを除いて、産業活動・社会生活が広範に渡って強制的に停止されています。
 
 不動産関連では、建設工事中断、ショールーム閉鎖、物件案内(viewing)禁止などが行われており、営業スタッフ(エージェント)による対面での営業活動や契約締結等も禁止と、不動産仲介業はほぼ営業停止状態となっています。
 

在星日系企業・駐在員への影響

 EPを新規に取得することも実質凍結が懸念されますが、仮にIPA(原則許可)が下りていたとしても、検疫政策上、入国できない状況が続いています。また、出張や本国へ一時帰国した場合は、シンガポールへの再入国ができない状況となっているため、緊急対応として、帰国も新規赴任も暫時「異動凍結」している日系企業が多いように見受けられます。日本人駐在員を片道帰国させる企業もあるようです。
 

「終戦」はいつか?「戦後復興」はどうなる?

 SARSは約半年で北半球が夏を迎えるとともに終息しましたが、今回の新型コロナウイルスは1年以上続く可能性もあるとの見方もあります。さらに終息後も、世界各国は反グローバリゼーションに方向転換してゆくものと予想されています。シンガポールにおいて外国人駐在員数が来年2021年にすぐ回復するという見込みは薄く、賃貸市況もリーマン・ショック後の2010年に見られたようなV字回復とはいかなそうです。

文=木村登志郎 (パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

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