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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2020年4月7日

新型コロナウイルス流行とシンガポール不動産市況

 新型コロナウイルスの流行が世界全体に大きな悪影響を及ぼしています。本記事筆時点(2020年3月上旬)での当地不動産市況への影響と見通しを記してみます。
 

住宅賃貸市況への影響、当面供給不足続く

 3月初めの時点で在シンガポール日系企業には、それを理由としての駐在員削減といった大きな動きは見られません。一方、老朽化した多くの物件の取り壊し・再開発ブームで、賃貸物件総戸数が激減し、極めてタイトな需給状況が続いています。その結果、家主に有利な「貸し手市況」が続いています。ただし、新型コロナウイルス流行に伴う先行き不透明感が、強気の家主心理に冷水を浴びせた結果となり、1月までは値上げ基調であった賃貸相場が、「横ばい」状況にはなっています。
 
 右の図は、当地不動産市況推移で、民間住宅売価指数(ピンク)、公団住宅売価指数(青)、民間住宅賃貸指数(朱色)です。2003年4~6月のSARS流行時、民間住宅「賃貸料」は下がりましたが、「売価」はほぼ横ばいで推移しました。
 

売買市況への影響
成約フリーズ、価格は弱含み、ただし、暴落は無さそう。

 2003年のSARS流行時には、民間住宅売買相場は商い閑散・価格横ばいで推移しましたが、今回も現時点では、ほぼ同様の状況です。しかし、2003年当時、世界のGDPの4%弱だった中国のGDPシェアは今や16%に達し、中国経済の不振が世界経済大不況の引き金となって、シンガポールの不動産売買市況の下落もありうべしとの見方もあります。ただし、競合する香港の金融センターとしての地位低下や、生産移転先としてのASEANの重要性が高まるにつれ、シンガポールの統括拠点・投資先としての優位性・安全性の評価が高まることもあり、筆者の私見ながら、シンガポールの不動産価値が大きく毀損することは考えにくいでしょう。
 

文=木村登志郎 (パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

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