シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXライフTOP「段階的な活動再開」とシンガポール不動産市況

シンガポール不動産「耳寄り情報」

2020年6月29日

「段階的な活動再開」とシンガポール不動産市況

 「サーキットブレーカー」が6月1日まで2ヵ月近く実施され、その後「段階的な活動再開」に移行しましたが、本稿執筆時点(2020年6月半ば)で、建設業、不動産業、小売・飲食業等は依然として本格的業務再開ができない状況にあります。
 

リーマン・ショック超えの世界大不況突入


 
 上の図はシンガポール不動産市況の推移で、民間住宅売価(ピンク)、公団住宅売価(青)、民間住宅賃貸(朱色)の指数です。2003年のSARS流行時には何とか持ちこたえた相場も、今回のコロナ禍ではリーマン・ショック時を超え、1930年代の世界大恐慌に匹敵する社会的打撃が懸念されています。
 
 いわば“有事”に弱いのが不動産。流動性・換金性に劣るため、不況の打撃を大きく蒙ります。全世界的に政府財政支出による企業・個人への空前の大型支援がなされているものの、打撃は不可避でしょう。
 

建設工事の大幅な遅れによる影響

 30万人を超える建設関係の外国人労働者の間で感染者が大量発生し、不動産建設プロジェクトはオフィスも住宅もほぼ完全停止。全面再開までには数ヵ月を要すると見られています。販売ショールームも再開できず、消費者心理を冷やしています。

 

国境閉鎖と移動制限が落とす暗い影

 日本商工会議所によると、駐在員やその家族数百人が国境閉鎖により赴任できていない、あるいは再入国できないという状況です。自由な海外出張が可能になるまでには相当な時間がかかるとみられ、当地への赴任者派遣のメリットを減少させています。
 
 しかし現状、外国人向けの民間住宅の空室率は依然として極めて低く、新型コロナウイルス流行以前には賃貸料の暴騰も懸念されていましたが、借り手の新規流入が抑制されれば、特に不況下では賃料値下げ圧力は強まるでしょう。また入国制限は、外国人バイヤーにとっても足かせになり、香港・中国からの大量資金流入があっても、それが不動産売買市況全般のV字回復に影を落としています。

文=木村登志郎 (パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

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