2012年6月18日
日本人&シンガポール人の国際結婚
多民族国家シンガポールでは、異民族同士のカップルや外国人がパートナーというカップルも決して珍しくない。異民族同士の結婚は年々増加傾向にあって、統計局のデータによると2010年にはシンガポールで結婚したカップルの2割を占めた。一夫多妻制のイスラム教徒だけを見ると3割以上になる。シンガポールに住む日本人にも民族・国籍・宗教などが異なるパートナーと結婚している人は多い。今回は、日本人とシンガポール人のご夫婦3組が登場。家族として共に暮らしている皆さんに色々な質問をしてみた。さて、返ってきた答えは?
目次
協力いただいたカップル
森夫妻
夫:裕司さん/妻:瀬理奈(Serena)さん(マレー系)
結婚5年目。2007年にビンタン島のゴルフ場で挙式。裕司さんが1997年にシンガポールで設立したゴルフショップ「YUJI GOLF」を夫婦で経営。
アン(Ang)夫妻
夫:バーナード(Bernard)さん(中華系)/妻:ゆかりさん
結婚8年目。今年4月にバーナードさんが会社を立ち上げたばかりで、ゆかりさんがサポートしている。2歳の双子姉妹の子育てにも夫婦で奮闘中。
ジョセフ(Joseph)夫妻
夫:レネ(Rene)さん(インド系)/妻:裕美さん
結婚5年目。共に大学時代を過ごしたニュージーランドへ家族で移り住み、5年ほど過ごした後、昨年末にシンガポールへ戻ったばかり。5歳の一人息子ミケシュ(Mikesh)くんと3人暮らし。
知り合ったきっかけを教えてください。
森夫妻
瀬理奈さん:ナイショです(笑)
裕司さん:2001年ごろにシンガポールで知り合いました。
アン夫妻
ゆかりさん:友人に連れられて初めてシンガポールに遊びに来た時に出会いました。彼女はシンガポールに良く旅行に来ていて知り合いも多く、彼も友達の1人でした。1年半ほどの遠距離恋愛の末、結婚が決まってシンガポールへ来ました。
ジョセフ夫妻
裕美さん:大学内の図書館で何度か顔を合せていて、ある時彼に『日本人ですか?』と尋ねられたのがきっかけで話すようになりました。
結婚してから相手の行動や考え方で驚いたことは?
森夫妻
裕司さん:きれい好きなことですね。自分では片付けたつもりでも、ダメ出しがよくあります(笑)
瀬理奈さん:自宅にあった本の多さに驚きました。
アン夫妻
ゆかりさん:結婚前に一緒に過ごした時間が短く、何もかもすべてが初めて。何とか合わせることに一生懸命でした。
バーナードさん:食事も生活の仕方も服の選び方も、全然違うと思いました。
ジョセフ夫妻
裕美さん:付き合っている時は違いを感じなかったのですが、子供が生まれて、子供の扱い方や育て方で互いの文化の違いを実感しました。彼の家は代々敬虔なカトリック信者。また、彼のお母さんもお姉さんも『女性は家庭にいるもの』というちょっと古風な感じだったのが意外でした。
相手の文化で良いと思うことは何ですか?
森夫妻
裕司さん:家族や親戚を大事にするところですね。付き合いの濃さは良し悪しですが(笑)親戚でバーベキューをやると30〜40人集まります。
瀬理奈さん:日本人の相手を思いやる言葉づかいやマナーっていいですね。自分がガマンをしても相手を尊重したり。日本の歴史も興味深いです。
アン夫妻
バーナードさん:相手の時間や手間を尊重する考え方や時間を守ること、モノを大切にするところなどですね。
ジョセフ夫妻
レネさん:日系企業で数年働いたことがあり、日本人は忠誠心が強く、正直で、誠実だと感じました。この3つは僕にとっても大事です。
裕美さん:インドの服飾の色やデザイン、刺繍の美しさに魅了されています。家族への愛情の深さや、自分の文化を大切にするところも良いですね。
夫婦の間での会話は何語ですか?
森夫妻
裕司さん:日本語が6割、英語が4割ぐらい。台湾にいたので中国語も話せますが、マレー語を覚える予定はありません(笑)
瀬理奈さん:日本のテレビドラマを見て日本語を覚えました。
アン夫妻
バーナードさん:僕は日本語が話せないので(笑)、英語です。子供とも英語で話します。妻は日本語でも話しかけています。
ジョセフ夫妻
裕美さん:夫婦の間では英語で、息子には日本語でもよく話しかけています。
家族の食事はどんなものが多いですか?
森夫妻
瀬理奈さん:食事は仕事が終わってから自宅で私が作ります。お義母さん直伝の森家のお味噌汁の作り方も覚えました。新しい日本食レストランに行ってみたり、お客さんとの会食などで外食することもあります。
アン夫妻
ゆかりさん:私が作るので日本食っぽいものが多いですね。たまに中華風のスープを作ったりもします。
バーナードさん:え、あれも日本食っぽいよ(笑)
ジョセフ夫妻
裕美さん:夫はインド料理、私は和食を作ることが多いのですが、パスタなども作りますし、外食も楽しみます。プラナカン料理も好きですね。
今はシンガポールに住んでいますが、将来はどこに住みたいですか?
森夫妻
裕司さん:仕事のベースがあるのでここに住んでいますが、ゆくゆくは九州の田舎とか、沖縄に住みたいですね。
瀬理奈さん:彼が行くところについて行きます。田舎で水がきれいなところが良いです。
アン夫妻
バーナードさん:子供の教育はシンガポールで受けさせたいと考えています。子供が学校を卒業したら違うところに住んでみてもいいですね。カナダとかニュージーランドとか。
ゆかりさん:ホントに~?(笑)一年を通じて温暖で子育てもしやすいので、シンガポールに住んで良かったと思います。
ジョセフ夫妻
レネさん:家族でニュージーランドに暮らしてみて、息子にはシンガポールの教育を受けさせたいと思うようになりました。良し悪しではなく、私たちにはこちらの方が好ましいな、と。今後のキャリアなども考えて、シンガポールに戻ることにしました。将来どこに住むかはわかりません。
今のパートナーと結婚して良かったことを教えてください。
森夫妻
瀬理奈さん:私達(ムスリム)は旦那さんのことを外で言わないので…ゴメンナサイ。
裕司さん: ケンカが少ないことですね。日本人同士だとぶつかってしまうようなことでも、文化的な背景が違いすぎるとケンカにもならなかったり(笑) そこに救われている部分はありますね。
アン夫妻
ゆかりさん:夫がとても協力的で、家事や子育てを一緒にやれることですね。ひとりで双子を見るのは絶対無理(笑)
バーナードさん:生活習慣などの違いからいろいろ学べることです。意見が異なることもありますが、お互いに話して納得できる点を探ればいいと思っています。
ジョセフ夫妻
レネさん:文化的な多様化に貢献できているのではないかと。意見が違うことから得られるものも多い。人生がより豊かなものになっています。
裕美さん:問題はたくさんあって大変(笑)。でも、乗り越えるごとに視野が広がり、自分の世界が大きく豊かになっていく喜びも大きいです。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.214(2012年06月18日発行)」に掲載されたものです。
文= AsiaX編集部