2012年8月6日
似て非なる「肉骨茶三つ巴」
多彩な食文化を持つシンガポールでは、肉骨茶(バクテー)にも多様性がある。ひと口に肉骨茶といっても、実は3つの大きな流派、潮州、福建、巴生(クラン)があるのだ。はたしてどれが元祖で本家で究極で至高なのか、似て非なる肉骨茶の骨肉の争いの決着は、ぜひ読者諸氏が食べ比べて判定していただきたい。
潮州Teochew
コショウ風味の爽やか派
潮州(テオチュウ)は中国広東省東部の市で、シンガポールには潮州にルーツを持つ華人が多い。中国の潮州に肉骨茶があるかは不明。
潮州肉骨茶はスープが茶色または透明で、コショウ風味が特徴。亞華肉骨茶餐室の創業者で潮州語を話すヤファさんに聞くと、「スープのベースは豚骨、豚肉、白コショウ、にんにく。ハーブは使いません」とのこと。同店では豚肉は脂肪が多いものと少ないものを揃え、客の好みに応えている。
亞華肉骨茶餐室YA HUA BAK KUT TEH EATING HOUSE
593 Havelock Road, #01-01/02 Isetan Office Building, Singapore 169641
電話:6235-7716
- 営業時間:火・木曜日 11:00〜翌2:00
- 水・金・土曜 11:00〜翌3:00 日曜日 11:00〜22:00 定休日:月曜日
日本人にも人気の店。香港の映画スター、チョウ・ユンファも2回訪れた。姉妹店「Outram Park Ya Hua Rou Gu Cha」もある。
巴生Klang
ハーブを効かせた薬膳風
マレーシアのクアラルンプールから西へ約30キロメートル。この巴生(クラン)こそ、実は肉骨茶発祥の地といわれている。
クラン肉骨茶はスープに漢方のハーブを使い、温かさを保つため土鍋で出てくる。豚肉以外に油揚げや野菜が入っている点もほかの肉骨茶と異なる。「梁记 (巴生) 肉骨茶では10種類以上のハーブを使っています。そして味付けをシンガポール人の好みに合わせてアレンジしています。本物のクラン肉骨茶は、もっと塩味が強く、具に使う豚肉の脂分も多いんですよ」(C.C.フーさん)。
梁记 (巴生) 肉骨茶LEONG KEE (KLANG) BAK KUT TEH
321 Beach Road, Singapore 199557
電話:8368-8229 / 9382-8762
- 営業時間:
- 10:00〜21:00 定休日:月曜日
4時間煮込んでつくるという肉骨茶は、ランチタイムには30分待ち覚悟の人気。兄弟店がゲイラン(251 Geylang Road, beside Lorong 11)にある。
福建Hokkien
ダーク&リッチなスープ
福建は中国南東部の省。この地域が福建肉骨茶の故郷かと思ってしまうが、実際には肉骨茶はないらしい。
福建肉骨茶は醤油を使った色が濃いスープが特徴で、スパイスにコショウ、にんにくなども使われる。新興瓦煲肉骨茶では、2種類の醤油を使う。「醤油のブレンドの割合は秘密。豚肉の脂肪は取り除いています。シンガポールでは、福建肉骨茶は潮州スタイルより数が少ないと思います」(アランさん)。
新興瓦煲肉骨茶SIN HENG CLAYPOT BAK KOOT TEH
439 Joo Chiat Road, Singapore 427652
電話:6345-8754
- 営業時間:
- 7:30〜翌4:00 定休日:月曜日
1983年創業の老舗。クレイポット(土鍋)に入って出てくる肉骨茶は種類、サイズも豊富。肉骨茶のほかにローカルメニューやタイ料理などもある。
幻の「広東肉骨茶」
シンガポールの肉骨茶には、今回紹介した潮州、福建、巴生のほかに、実は広東スタイルもある。と言うより、存在した。
シンガポールでおそらく唯一と思われる広東肉骨茶の店、テロックブランガーにあった「Xiu Jie Claypot Bak Kut Teh」が先ごろ閉店してしまったのだ。オーナーに電話をしたところ、再オープンの予定はないとのこと。シンガポーリアンの間では人気店だったようで、「肉骨茶ベスト10」のような企画にもよく登場していたのに……。残念。
写真提供:小柴茂樹氏
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.217(2012年08月06日発行)」に掲載されたものです。
文= AsiaX編集部