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熱帯綺羅

2016年10月3日

歴史と自然が共存する海浜公園 ラブラドール自然保護区

イギリス軍が残した砦や大砲などの戦跡も

海浜公園の裏手にある自然保護区内には第二次世界大戦の戦跡があり、戦時中にイギリス軍がこの場所を防衛基地(要塞)として使っていた史実を垣間見ることもできます。

 

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1886年に掘られた地下トンネルは手付かずのまま残っている貴重なもので、当時の面影を感じることができる。爆薬や火薬の倉庫として利用され、司令部としての役割も果たしていた。

 

ラブラドール自然保護区の要塞はイギリス軍がシンガポールに保有していた9つの拠点のうちのひとつであり、南岸より侵略しようとする敵国を阻止する目的で作られた経緯があります。1878年に英国軍はケッペル港の西口とシンガポールの領海を防御するため、この公園内にパシル・パンジャン砦を築きました。シロソ砦がセントーサ島側を守り、このパシル・パンジャン砦がシンガポール本島側を守る役割を担っていたのです。

 

対日本戦においても、日本軍がここから上陸すると想定され、防御地点として海を見渡せる丘の上には6インチの大砲発射台が設置されました。実際に、1942年のシンガポールの戦いでは最後の攻防戦のひとつとなった「パシル・パンジャンの戦い」で支援砲撃を行ったとされています。敷地内には1892年に掘られた砲弾倉庫や地下壕なども当時のまま残されており、これらの遺物はシンガポールにおける戦跡を辿る貴重な道しるべともなるでしょう。「ガーデン・シティ」と称されているシンガポールの素晴らしさは緑溢れる綺麗な街を維持しているだけでなく、自然のなかに歴史的遺物を残し、歴史と自然環境の共存を図っていることにあります。

 

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保護区内の高台にあるモニュメント。戦時中に戦闘員が大砲発射の準備や爆薬を補充したり、望遠鏡で敵を見張ったりする様子を再現している。1938年、6インチの大砲発射台から102ポンド弾を16キロメートル射程内に打ち込める巨砲(37トン)が設置された。

 

公園の対岸には石油精製所や化学工場などの工場の建ち並ぶブコム島が目の前に見えます。島の端にある、1990年代まで石油の積み下ろし場所として利用されていた「桟橋」も、今では風情溢れる風景の一部となっています。物流のハブであるシンガポールでは、大きなコンテナを積んだ貨物船が往来する風景はよく見られますが、公園の海岸沿いからは隣のハーバー・フロントに寄港、出港する豪華客船を見る機会もあります。

 

ラブラドール自然保護区はまた、夕陽の絶景スポットとしても知られています。静寂のなか、気持ちいい潮風を全身に感じながら過ごす黄昏はまさに自然がくれた贅沢なひと時。海岸線にゆっくりと沈む夕日を眺めながら、心と身体をリフレッシュする場として訪れてみるのもいいでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.311(2016年10月3日発行)」に掲載されたものです。 取材・写真:キャラハン直美

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