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熱帯綺羅

2016年2月1日

新年に新たな幸せを 人々が願いを掛ける「春聯」

 

シンガポール独自の正月飾りも

旧正月の時期には、春聯のほかにも紅い切り紙や、「福」の文字などが家の門や窓に貼られます。加えて、シンガポール独特の飾りと言われているのがパイナップル形の提灯。軒先からぶら下がる姿はどこかコミカルで可愛らしく、一般家庭はもちろん、商店の軒先などでもよく見かけます。しかし、なぜパイナップルがモチーフとなっているのでしょうか。チャイナタウンのテンプル・ストリートで10年にわたり土産物屋を営んでいるシンディ・ザオさんに聞いたところ「福建語でパイナップルを表す“黄梨(Ong-Lai)”の発音が、富が来るという意味の“旺来(Ong-Lai)”と同じことから、縁起がよいものとしてパイナップルを飾っているのです。これは中国では見られない、シンガポール独特の文化です」とのこと。日本でも「喜ぶ」の言葉に掛けて「昆布」が縁起物とされていますが、これも同様の発想といえるでしょう。

 

この時期、チャイナタウンのスミス・ストリートやテンプル・ストリート界隈は正月飾りを売る店が並びます。中には、目の前で春聯に好きな文字を筆で書いてくれるお店も。シンディさんの店もその一つで、1日に平均して20枚から30枚は注文が入るそうです。昔から人気があるのは「健康」「平安」「幸運」「財宝」などの文字ですが、特に今年は「平安」の文字が人気なのだとか。
「ニュースなどで不安定な世界情勢が伝えられていることもあり、家族の平和をいっそう強く願う気持ちが現れているのかもしれませんね。中華圏の方だけでなく、インド系やマレー系のお客様もいらっしゃいますよ」(シンディさん)。

 

時代は変われども、新しき年に幸せを願う人々の気持ちに変わりはありません。春聯はそんな人々の願いを映しながら、旧正月前の街を鮮やかに彩っています。

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アンシャン・ヒル近くにあり、140年もの歴史がある書道協会の本部「廣惠肇李氏書室」に掛けられた春聯。
右側を上聯(または前聯)、左側を下聯(または後聯)と呼ぶ。さらに上部に横置きする第3の作品(横批)と組み合わせて、ゲート型に飾る場合もある。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.296(2016年2月1日発行)」に掲載されたものです。

取材・写真:長島 清香

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