2010年3月1日
華麗なる映画館キャセイ・ビル The Cathay
日本軍のプロパガンダがこのビルから放送された
キャセイ・ビルが映画の上映を始めてまもなく、シンガポールも太平洋戦争の影響を受けました。1942年、日本がシンガポールを占領した時、日本軍はこのビルも占拠して軍政のプロパガンダ放送を行ったということです。シンガポール人の多くはこの放送を聞かず、英国放送協会(BBC)のニュースを密かに聞いていた、とはこのビルのそばにあるモニュメントに記録されています。1945年には日本軍の降伏を受け、キャセイ・ビルはマウント・バッテン将軍の司令部となりました。
戦争の混乱期、映画の上映もままならなかったキャセイですが、戦後しばらくして落ち着きを取り戻してからは、前述したようにホテルとしても栄華を極めたのでした。
再建された新キャセイ・ビル75周年記念を祝う
創設者ロック・ワントー氏亡き後、親戚の女性メイリーン・チュー(Meileen Choo)氏によって彼の遺志が引き継がれ、ビルの創設55周年には「CATHAY」という本も発行されて、キャセイの歴史とシンガポールの映画史の詳細が数多くの写真とともに記録されました。
この本は現在、ビル内にオープンしている「Clique」というコンセプト・ショップで販売されています。またビル2階にはギャラリーもあり、こちらにはキャセイ・オーガニゼーションがその昔映画制作に使った道具、またロック氏が収集していた本、氏が遺した数多くの写真、特に趣味だった鳥の写真などが展示されています。
しかし莫大な予算のかかる映画制作は、1996年に公開された「アーミー・デイズ(Army Daze)」を最後に中止となり、外国映画の配給に専念しています。
当ビル内の「ピクチャー・ハウス」では、社会派映画や単館で上映されるような外国の映画も上映しています。現在「キャセイ」で上映されているのは中国正月特別映画の「リトル・ビッグ・ソルジャー(Little Big Soldier)」(ジャッキー・チェン監督)。今年半ばには会社創立75周年記念のさまざまなイベントがこのビルの中で行われる予定です。
文= セガラン郷子
写真=Eugene Chan
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.162(2010年03月01日発行)」に掲載されたものです。