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熱帯綺羅

2010年5月17日

やきもののルーツ「龍窯」との邂逅

シンガポールに現存する龍窯は2つ。いずれもジャラン・バハル地区にあります。ひとつはThow Kwang(陶光)Industryが保有しているもので、1980年代の製陶業の衰退とともに使われなくなっていましたが、ここ1、2年ほどは地元の陶芸家らが中心となって毎年のように窯焚きが行われています。

もうひとつが、ジャラン・バハル・クレイ・スタジオの龍窯。シンガポール独立前の1958年に作られたもので、当時の工場の名前「源発(Guan Huat)陶器廠」からGuan Huat Dragon Kilnと呼ばれていました。1980年代半ばに操業停止して以降、しばらくは陶光の龍窯同様ほとんど使われなかったのですが、2000年にシンガポール政府観光局の中に龍窯保存プロジェクトが立ち上がり、窯および屋根の修復が行われました。その後、陶芸の振興と芸術教育のための施設として国からも承認され、2006年11月にジャラン・バハル・クレイ・スタジオとしてオープンしました。

現在、地元シンガポールをはじめ世界各国の陶芸家がスタジオに常駐し、作品制作に励んでいます。薪をくべて焼成する昔ながらの製法は重労働で、火加減を見るために何日も徹夜したりと決して楽なものではないのですが、表面に付着する灰によって生み出される色や風合いの妙にひかれて、龍窯にこだわる陶芸家達が集まって来ています。学校や一般向けの陶芸教室が行われる時にはスタジオの陶芸家たちが講師役として登場することも。また、毎月第1土曜日に開催されるオープンハウスでは、一般の人もやきものづくりに挑戦したり、陶芸家のデモンストレーションを見ることができます。

現在ジャラン・バハルの一帯は「クリーンテック・パーク」という、環境技術の研究開発機関が集まるビジネスパークの建設が予定されています。2030年完工予定という壮大なプロジェクトで、第一期の工事が今年7月から本格化します。自然に囲まれ、シンガポールの歴史を見守ってきた2つの龍窯の周辺は、これからまた大きな変化を迎えることになりそうです。

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敷地内のオープンスペースには、陶芸家達によってスタジオの龍窯で焼成された作品が展示されている

Jalan Bahar Clay Studios

97L Lorong Tawas Singapore 639824

TEL:6777-1812

97L Lorong Tawas Singapore 639824

文= 石橋雪江
写真=Eugene Chan

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.167(2010年05月17日発行)」に掲載されたものです。

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