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熱帯綺羅

2010年11月1日

トロピカル・ガーデンのあるオフィスを訪ねて

ランドスケープデザイナーという仕事

トロピカル建築の父として知られるスリランカ人のジェフリー・バワに影響を受けたというチャンさんは、シンガポールではまだ珍しいランドスケープデザイナー(造園設計士)の1人。個人邸宅やコンドミニアム、ホテルの庭園、カフェやレストランなどの外部空間をプロデュースしています。国内では、ガーデンダイニングの先駆けとなった「P.S.カフェ」や「ホワイトラビット」もチャンさんによるもの。どちらも、数十年前からそこにあると思われる木々や熱帯植物がその場所を引き立てる大切な要素となり、都会のオアシス的な空間が人気です。近年のエコブームも手伝って、緑をたっぷりとランドスケープに取り入れる建築プロジェクトも増えており、チャンさんの活躍の場も拡がっているとのこと。

チャンさんは、シンガポール国立大学の建築学部の出身。イラストを書くことと自然が好きで、アートになるべく近い学部として建築を選択、その学生時代に、バリ様式の庭園デザインを世に広めた第一人者でバリ在住のオーストラリア人マデ・ウィジャヤさんとの運命的な出会いがありました。「鬱蒼としたジャングルか、供え物としての花を供給するのに植えられていた程度の熱帯植物を、その個々の美しさを生かして庭園デザインに織り込み、次々と名だたるランドスケープを生み出したマスターです」とチャンさんはマデさんについて説明。彼がデザインしたリゾートや邸宅のランドスケープを集めた本を出版する際、イラストを担当しながら多くを学び、チャンさんは今のキャリアをスタートさせることになったといいます。

「僕は植物を育てるのが上手な“グリーンサム”ではなく、メンターであるマデさんから教わった、それぞれの植物や物と対話をしながらコラージュをするように空間を埋めていくということをしているだけです」と謙虚に笑いながら、庭の花や植物の名前や特徴もすらすらと教えてくれました。そんなチャンさんの横顔に、「自然を愛でるのにアートを介する以上の方法はない」というオスカー・ワイルドの言葉を引用するほどの情熱を垣間見ました。自然と共存した憩いの場、チャンさんの次なるプロデュースが楽しみです。

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ランドスケープデザイン事務所「サラダ・ドレッシング」代表のチャン・ホァイヤンさん。

文= 桑島千春
写真=Eugene Chan

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.178(2010年11月01日発行)」に掲載されたものです。

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